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困難を背負い込む子どもたち

6人に一人

みなさん、こんにちは!
前回までLFAの活動を中心にお話していたこのブログですが、今回からはより深く、私たちが向き合う”子どもの貧困”や”教育格差”について解説していきます。

まず、今回から3回に分けて”子どもの貧困”について解説します。
「日本に貧困なんてあるの?」
「先進国なんだから貧困なんてあるわけないじゃん」
これを読んでいる皆様の中にもそう考えている方がいると思います。

しかし、下のグラフをご覧ください。

子どもの貧困率グラフ
(出典:厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」を基に作成/平成6年の数値は兵庫県を除いたもの)

このグラフからわかるように、経済的に貧困な状況におかれる子どもたちは現実におり、その割合は年々増えているのです。

増えているのはわかった。
でも、”子どもの貧困”って具体的にどんな状況なんだろう?貧困っていっても日本は先進国だからそんなに大変じゃないんじゃないの?
子どもの貧困、と一口にいわれても、それがどれくらい厳しいのか、実際にどんな困難を抱えているのかはわかりづらいでしょう。
今回はそうした疑問に答えていきます。

■”子どもの貧困”

そもそも”子どもの貧困”の定義はどうなっているのでしょうか。

まず、貧困の捉え方には’絶対的貧困’と’相対的貧困’があります。
絶対的貧困とは、人々が生活する上で必ず欠けてはいけないはずのもの(例えば衣食住や医療など)が欠けている状態を指します。一般的に’貧困’と言ったときには発展途上国の様子などが想像されると思いますが、このときの貧困は絶対的貧困にあたります。

一方、子どもの貧困といったときの貧困は’相対的貧困’を指します。
相対的貧困は、ある社会の中で普通とされる一定の範囲以下の生活を指します。国や地域、生きている時代によって水準が異なるため、’相対的’という言葉を用います。

OECDでは、世帯の手取り収入(所得から諸々の税金等を引いた実際に使えるお金)をその世帯の人数で調整した値(=等価可処分所得)が、その社会全体の中央値のさらに半分の数値を貧困線とし、貧困線以下の世帯を貧困としています。

…かなり難しいので、実際の数字で考えてみましょう。

今の日本では、1人世帯では年収122万円、両親と子ども2人の場合は244万円が貧困線とされます。
4人家族であれば月収およそ20万円以下であれば貧困状態ということになります。

想像できますか?
子どもがいて、月に20万円以下で生活しなくてはならないという状況を。
子どもの貧困とは、この貧困世帯に属する子どもの割合を指します。
しかも、122万円や244万円という数字は貧困世帯の上限です。
実際にはこの値よりも、月20万円よりも厳しい状況の貧困世帯がたくさんいるのです。

さきほどのグラフで示したように2012年時点で子どもの貧困率は16.3%です。
子どもたちが日々生活している教室の中でも、35人学級であれば1クラスに約6人が貧困という状況です。
日本全体で考えると実に約6人に一人の子どもが経済的に困難な状況に置かれています。
今の日本では、社会で一般的とされる経済状況よりもかなり低い状況で過ごさなければいけない子どもがたくさんいるんだ、ということがわかると思います。
6人に一人

さらに、2008年に出版された『子どもの貧困白書』では子どもの貧困について「子どもが経済的困難と社会生活に必要なものの欠乏状態におかれ、発達の諸段階におけるさまざまな機会が奪われた結果、人生全体に影響与えるほどの多くの不利を負ってしまうこと」と定義されています。
子どもの貧困とは、みんなが当たり前に持っているものを持っていないことによって不利な状況に陥ってしまい、それが積み重なって人生全体で困難を背負うことなのです。

子どもの貧困関係イメージ図(『子どもの貧困白書』より編集版)
(出典:『子どもの貧困白書』(2008)「子どもの貧困を定義する」p.11の図を引用)

例えば中学生の生活を取り上げて考えてみても、部活・修学旅行・友達と遊びに行くときの交通費・学校以外で勉強するお金・給食費・風邪をひいて病院に行くお金(および健康保険料)など、たくさんの場面で当たり前にお金がかかります。
こうした当たり前が当たり前できないとき、子どもたちは他の当たり前の子どもたちと比べ、人とのつながりや持っているもの、得られる経験が少なくなってしまいます。
貧困世帯の子どもたちは、本人にやる気があったとしても、環境によって制限されてしまうことがあるのです。自分の力が及ばない範囲で当たり前から外れてしまったとき、子どもたちは今と未来に様々な困難を背負います。
そんな子どもたちが大人になったとき「努力してこなかったあなたが悪い」と言えるのでしょうか。
今の日本ではそんな子どもたちの割合が増加傾向にあるのです。

 

■”子どもの貧困”の厳しさ

今の日本には自らの意志にかかわらず、機会や権利が制限され、生きづらさを感じる子どもたちが6人に一人もいるということをお話してきました。
では、具体的に子どもが貧困な状況を生きるとはどういうことなのでしょうか。どんな問題が起きているのでしょうか。
ここでは、前回お話した、LFAが向き合う子どもたちが抱える「経済的な理由による学習機会の不足」「著しい学習の遅れ」「希望が持てない」「安心・安全な場所がない」という4つの困難について、LFAが見てきた子どもと、子どもを取り巻く様子からお話していきます。
子どもの抱える困難

①経済的な理由による学習機会の不足

子どもたちの教育の多くを家庭の負担でまかなっている現在の日本において、家庭の経済状況は子どもたちの教育機会を大きく左右します。

ー学校外での学習機会の不足
LFAに通う中学生の多くは公立高校を受験します。
公立高校であれば学校の範囲の学習で済むのではないか、学校に行って頑張って勉強をすれば受かるのではないか、と思うかもしれません。
しかし、現在は公立高校でも学校独自の問題を出し、それが中学校での学習範囲を超える場合があります。
こうした学校を目指すときには、学校以外での学習(塾に通ったり、追加で参考書を購入する)が必要になります。
経済的に困難な状況にある子どもにとってこれは大きなハンデとなります。
周囲の子どもたちは塾に通ったり、参考書を購入できますが、そうした子どもたちと比べて学習機会が不足することになるのです。

ー進学機会の制限
経済的な理由から、進学機会が制限されることもあります。

LFAの教室に通っていたある子どもは、通い始めた時点ですでに都立上位校を目指せる学力を持っていました。
しかし、経済的な事情から滑り止めの私立高校を受験できないため、安全策をとり、ランクをいくつか落とした高校に推薦で入学することを選ばざるを得ませんでした。
この子は、本人もその高校を志望し、合格する実力もあったにも関わらず、経済的な理由から高校入学時点で自らの選択が制限されてしまったのです。

さらに長い視点で考えると、高校で受ける教育内容が変わりますし、その先の進路にも影響を及ぼします。
高校は義務教育ではないため、高校ごとに学習内容が大きく変わります。そのため、進学する高校によって学習内容が変わり、例えば大学進学に必要な内容や教科が設けられていない、ということがあります。そうして、その先どのような進路を取ることできるのか、ということにも影響するのです。

ー遊ぶことは当たり前ではない
子どもたちが制限されるのは勉強に関する機会に限りません。
おそらく、多くのみなさんにとって部活動に所属することや放課後友達と遊びに行くことは当たり前だった方が多いのではないでしょうか。
しかし貧困世帯の子どもたちの中には、部活動にかかる費用が捻出できなかったり、夜も働きに出る親の代わりに小さい妹の面倒を見なければいけない、といった事情を抱えた子もいます。
こうした事情から部活動の参加をあきらめたり、友達付き合いが制限されてしまう、といったことがあります。
みんなが部活に向かったり遊びの予定を立てている横を黙って通りすぎるとき、子どもは自分ではどうすることも出来ない悔しさ・苦しさを感じているのではないでしょうか。

②著しい学習の遅れ
「このままの成績では、どの高校にも行けない」
三者面談でそう言われてしまう子どもたちがいます。
LFAが向き合う子どもたちの中には、中学3年生で分数や小数の計算でつまずいているほど、著しい学習の遅れを抱えている子どもたちがいます。

こうした子どもたちは経済的な理由により学習機会が不足しているとも言えます。
また、貧困家庭に育ってきたことによって周囲の環境が不安定であったり、勉強する意味が見出せなかったりと学習する環境が整っていなかったということの現れでもあります。
著しい学習の遅れのため、子どもたちは学校の授業にはついていけませんし、希望する進路に進めない子どもたちもでてきます。
また、学校の授業についていけない、ということは学校の文化になじめない、学校に居づらいと感じる一つの要因でもあります。

子どもたちは学習の遅れという困難から将来を制限されたり生きづらさを感じることがあるのです。

③希望が持てない

ー将来の夢が語れない
そもそも将来の夢を見る機会さえ持てない子どもたちもいます。

ある子どもは中学3年生の時に「中卒で働くのは嫌だけど、そうするしかないんだと思う。勉強苦手だし、勉強できなくても働ける場所はあるから」と言いました。
その子の家庭は経済的困難を抱えており、自分も働かなければならないと考えざるを得ない状況でした。
同時に、高校進学は当たり前ではなく、周囲からも働く以外の選択肢を期待されていないという状況でした。
本当は、服飾やメイクといった美容関係に興味があり、その道で知識や技術をつけて働きたいという気持ちがありました。しかし、その子はそれを周囲の人たちに打ち明けることはできませんでした。
周囲の環境に左右され、自らの可能性を狭めざるを得なかったのです。

ー目標を語ることができない
将来の選択という先のことだけでなく、ちょっとした目標が語れない、ということも起きています。

先ほどの子どもは中学校の定期テストでも目標を定めることを苦手としていました。
「何を言っても馬鹿にされる」「目標を立ててもその点数を取れる気がしない」
しかし、その子の本音は「本当は80点くらいとりたい」というものでした。
積み重なってきた学習の遅れや周囲からの目線から自信を失ってしまっていたのです。
経済的状況に付随する複雑な環境がその子の可能性や未来を狭めていました。

④安心・安全な居場所がない
自分の居場所だと思える場所がなく、自己肯定感や自己効力感を育むことができてない子どももいます。

ある子どもは「家に帰っても親はいないし、心配かけられない。」と言っていました。
この子の家庭は母子家庭で、母親が昼夜仕事を掛け持ちしていたため、ほとんど家にいませんでした。
一方で、他の大人たちは信用できない、ともこぼしていました。父親との関係が悪く、大人への警戒心が強くなっていたのです。しかし、こうした状況を知らないと周囲の大人たちとの折り合いも悪くなります。この子の場合は学校の先生たちとの折り合いが悪くなり、不登校の寸前でした。

また、生まれたときから親からまったく褒められた経験がなく、そもそも興味を持たれていなかった、という子どももいます。
その場合、周囲とどうコミュニケーションをとったらいいかわからなかったり、人に対して信頼感を持てない、自分を肯定することができない、という問題を抱えることがあります。

経済的に困窮する家庭ではこうした複雑な事情を抱えていることが少なからずあります。
そのような時、自分の居場所だと思える場所がない、安心して過ごせる場所がない、という状態に陥ってしまう事があるのです。


■社会から取り残される子どもの貧困

ここまで、貧困家庭で育つ子どもたちの厳しさをお伝えしてきました。
一方で、こうした問題は見えにくいものでもあります。

ー自らの殻に閉じこもる子どもたち
こうした状況に置かれた子どもたちは自然と周囲の人への信頼を失い、自らの殻に閉じこもることで安全な環境を作ろうとすることがあります。
LFAの教室に通う子どもたちからも「学校の担任の先生は信じられない」「家に帰ってもどうせ親はいないし…」といった声を聞くことがあります。
しかし、そんな子どもたちからさらに話を聞き出してみると今まで人と関わる機会が少なかったから話すことが苦手であったり、どうやって自分の話を相手に伝えればいいのかわからない、といった背景が見えてきます。周りの人に自分の方を向いてほしいし、悩んでいることを相談したり、何気ない話を受け止めてほしいのに、人と話す機会が少なく信頼関係を築く経験をしてこなかったために、さらに社会とのつながりが閉ざされていきます。

ー孤立する家庭
「相談できる人がいなくて、どうしたらいいのかわからず不安だった」
この言葉は過去にLFAの教室に通う中学生の保護者様からいただいた言葉です。
このご家庭は引っ越してきたばかりのひとり親世帯で、保護者様はフルタイムで働いているため学校の行事にもあまり参加できず、周囲に相談できる人がいない、孤立無援の状態でした。
働いているためなかなか子どもたちと向き合えないことに加え、子どもの生活や進路について適切な情報の収集方法自体がわからず、家庭で子どもたちをサポートしきれないことに歯がゆさを感じておられました。
’子どもの貧困’問題では、子ども自身の問題だけでなく、その子を育てる親もまた苦しみ、生きづらさを感じているのです。

ー周囲の無理解
さらにこうした子どもたちの行動が表面的にしか理解されないことも、子どもたちを追い込んでいく要因となります。
「なんでこんなこともわからないの?って言われて質問しにくくなった。もうあの塾の先生に会いたくない。」
ある時、LFAの教室に通う子どもがこんな発言をしました。
この子どもは補助金をもらって塾にも通っていました。
最初は学習の遅れを取り戻そうとやる気をもって通っていましたが、塾の先生に叱られたり馬鹿にされることが多く、やる気がどんどん落ちていってしまいました。

この言葉を発した先生にとっては何気ない一言だったのかもしれません。
しかし、そうした言葉が積み重なっていくにつれ、子どもは自らの置かれた環境と周囲の無理解さの両方に苦しめられていくことになります。

また、周囲の人たちが子どものことを、’なんだか勉強ができない子だな…’’教えてもできるようにならない、やる気がないんだな’と表面的に捉えてしまうことは、根本にある子どもの問題を見過ごしてしまう事になります。

生徒を見送る学生教師
(子どもたちを見送る学生教師。子どもと向き合うことで、社会にある課題とも向き合います)

■困難を背負い込む子どもたち

さて、ここまで子どもの貧困の状況について解説してきました。

スタートは経済的な理由だったかもしれませんが、そこから様々な制限や生きづらさを経験し、子どもたちは多くの不利を背負うことになります。
経済的に厳しく、そこからさらに様々な不利が発生する。
多くの子どもたちが相対的貧困という当たり前から大きく外れた環境の中で困難を背負い込んでいます

こうした状況は今の日本ではなかなか見えづらいものです。
LFAの学生教師の中でも、実際に子どもの指導をし、その子ととことん向き合うまでわからなかった、という人もいます。
これを読んでくれた皆様には本当に日本には子どもの貧困という問題があり、今まさに多くの困難を背負わされる子どもがいることを一緒に学んでいただきたいです。

では、なぜ先進国と言われる日本でこんなにも経済的に厳しく、自らの意志が制限され生きづらさを感じる子どもたちが増えているのでしょうか。
先程、子どもの貧困率の話をしたときに、’貧困世帯に属する子どもの割合’と伝えてきました。
子どもがいる’世帯’、ひいては子どもを育てる’大人’たちの間で今何が起きているのでしょうか。
なぜ”子どもの貧困”という問題が起きてしまうのか、社会の仕組みに注目しながら、次回はお話していきます!

 

※今回紹介した子ども・保護者様のエピソードはプライバシー保護の観点から再構成しています。

 

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