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社会が生み出す子どもの貧困

負の連鎖

こんにちは!
LFA通信では、前回から”子どもの貧困”問題をとりあげています。

前回の記事では、子どもの貧困とはどういう状況なのかについて、数値的な面とLFAが見てきた子どもたちの様子についてお伝えしました。
(前回の記事はコチラ!→http://learningforall.or.jp/2017/06/09/blog-003/)

では、なぜ子どもの貧困は引き起こされるのでしょうか。
その原因の一つに”子どもを育てる親世代の貧困”があります。
そもそも、子どもたち自身がお金を稼ぐわけではありません。
”子どもの貧困”という言葉を聞くと子どもたちのみに目が行きがちですが、その背景には”親の貧困”、”家族の貧困”があるのです。

その中でも今の日本で厳しい状況にあるのがひとり親世帯です。
現在の日本では約8人に1人の子どもがひとり親世帯で生活しています。
この数字はOECD諸国の中でも平均的な数字で、ひとり親世帯で育つことは今の日本では決して特別なことではない、一つの家族の形です。

その一方で、日本のひとり親世帯は大人が二人以上いる世帯と比べて貧困率がとても高いです。
先日発表された厚生労働省の国民生活基礎調査でもその差は明確です。

子どもがいる世帯の相対的貧困率(ひとり対ふたり)
(出典:平成28年度国民生活基礎調査より作成/※ここでの世帯は世帯主が18歳以上65歳未満の世帯をいう)

大人が二人以上いる家庭の相対的貧困率は10.7%です。
その一方で、ひとり親世帯は実に半分以上が貧困状態にあります。

今回はまずひとり親世帯の貧困を生み出す背景に注目して、子どもの貧困問題の原因に迫っていきます。

■困難な世帯を取り巻く環境ー働いても報われない社会

ひとり親世帯を苦しめる大きな問題が働いても報われないーワーキングプアという状態にあることです。
日本のひとり親世帯では、ただでさえ苦しい状況に置かれているにも関わらず、働いても報われていない現状があります。

下の表をご覧ください。

表:世帯の状況と就労状況による子どもの貧困率(日本)

 

非就労世帯

就労世帯(就労者は1人)

ひとり親世帯

60%

58%

大人が2人いる世帯

50%

11%

(出典:OECD(2008)”Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries”より作成)

2008年のOECDの調査によれば、大人が2人いる世帯では働くことによって貧困率が大幅に減っています。
一方、日本のひとり親世帯の貧困率は就労していない家庭で60%、就労世帯では58%です。働いても働かなくても、あまり貧困率は変わりません。
ひとり親世帯の多くが、働いても十分な稼ぎが得られず貧困状態におかれる”ワーキングプア”に陥っています。

ここで、日本の現状の深刻さをより理解するために世界と比較してみましょう。
日本の次に就労している家庭での貧困率が高いルクセンブルクでは、就労している家庭で38%、非就労世帯では69%となっています。
下には「就労しているひとり親世帯の相対的貧困率」のグラフのみ掲載しておきますが、他の国と比べて日本は就労していても相対的貧困率がかなり高い、ということがわかります。就労しているひとり親世帯の相対的貧困率(OECD比較)

(出典:OECD(2008)”Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries”より作成)

そもそもこのグラフからわかるように、ほとんどの国では就労していればひとり親世帯でも貧困率は10~25%程度です。
日本のひとり親世帯は働いていても貧困である
この状態が異常であることがわかります。

■困難な世帯を取り巻く環境ー働いても満足に稼げない

働いても貧困である、という意味で特に深刻なのが母子世帯の状況です。

母子世帯の8割以上が実際に働いています。この数値は諸外国と比べてみても高いです。
しかし、その内訳は約半分が非正規雇用です。正規雇用は4割にも届きません。
これにより、母子世帯は働くことによって得られる収入が減りますし、身分や福利厚生の面で不安定な状況に置かれます。

母子世帯になぜ非正規雇用が多いのでしょうか。
例えば、子どもを預かってくれる施設が少ないから時間に融通がきく非正規雇用を選ばざるを得ないのかもしれません。
母子世帯になった後に改めて働き口を探したときに、年齢や性別がハードルになっているということも考えられます。
少なくとも、本人が正規雇用を希望したとしても、それがかなえられない状況があることは確かです。

また、このような状況の中で一つの仕事では満足に稼げず、仕事を掛け持ちすることになり、家庭で親が過ごす時間が少なくなってしまい、親子ともにストレスを感じてしまうかもしれません。

■困難な世帯を取り巻く環境ー社会に支えてもらえない

ひとり親世帯の貧困率が高いもう一つの理由に、公的な支援が不十分であることが挙げられます。

まずひとり親世帯への金銭的支援の代表例に児童扶養手当があります。
この児童扶養手当はひとり親世帯の所得に応じて受け取ることができます。
2016年度現在、子どもが1人であれば月々最大4万2330円が支給されます。
しかし、子どもが2人の場合は5万2330円(+1万円)、3人の場合は5万8330円(+1万6000円)と、子どもの数が増えてもその額はあまり変わりません。
そのため、子どもが多いひとり親世帯は厳しい状況に置かれることになります。
また、現状のひとり親家庭の厳しさや子どもに対する私費負担の高さをかえりみても、この額が十分なものとは言えないでしょう。

また、ひとり親世帯が得る収入の方法として養育費があります。
しかし、この養育費が実際に支払われている割合は母子世帯で約20%、父子家庭ではたったの4%という現実があります。
この背景には、養育費支払いに対する法的な強制力が弱いことや、養育費に関する情報が行き渡っておらず、きちんと権利を主張できないという状況があります。

ひとり親世帯はその困難を支えてくれる制度や人が不十分な中で暮らさざるを得ないのです。

■困難な世帯で育つということ

さて、ここまで親世代の困難に注目して、子どもの貧困が生まれる社会状況について考えてきました。
では、このように社会によって生み出された貧困の中で生きる子どもたちはどんな困難を抱えることになるのでしょうか。様々ありますが、今回は二つの状況に注目します。

まず、ひとり親世帯では仕事の時間に親の時間が多く割かれ、子どもと共に過ごす時間が少ないという状況があります。
母子世帯に限った研究ですが、日本のシングルマザーは1日のうちで仕事時間が315分と、長い一方で、育児時間は23分と、とても短く「仕事に偏った時間配分」となっているという研究結果があります(田宮遊子・四方理人(2008)「母子世帯の仕事と育児― 生活時間の国際比較から ―」『季刊社会保障研究』)。
この時間配分は世界的に見てもかなり仕事に偏っています。
例えば、日本の次に仕事時間が長いアメリカでも、仕事時間が242分、育児時間が74分と日本の3倍以上の時間を育児に使うことができています。

すでに精一杯働く親たちがいる中で、ひとり親世帯に育つ子どもは、親とのコミュニケーションを取る時間が少なくなってしまいます。
また、突然の病気や学校からの急な呼び出しになかなか対応できないこともあるでしょう。
こうした状況は、親子ともにストレスを感じる原因になります。
この研究でも、シングルマザーのワーク・ライフバランスの確保が必要であると言われています。
子どもと過ごす時間を取りたいけれど、家庭の生活も担わなければならないというジレンマの中で、精神的な安定が保ちづらい状況があります。

また、厳しい経済状況も相まって、ひとり親世帯では進学率が低くなっています。子どもの大学進学率(ひとり対ふたり)

(出典:厚生労働省(2015)「ひとり親家庭等の現状について」より作成)

実際、ひとり親世帯の半数以上が子どもの進学・教育に不安を感じており、進学機会が制限されている現状が見えてきます。

また、学歴と収入には相関があることから、置かれている環境によって貧困が次の世代に連鎖しやすい状況があることが考えられます。

学歴と年収

(出典:「ユースフル労働統計ー労働統計加工指標集ー2012」より作成)

さらに詳しく子どもに注目した内容については、ぜひ前回の記事をご覧ください。

ここまで見てきたように、家庭の状況は子どもたちに大きな影響を与えています。
それにより子どもの人生は左右され、貧困は世代を超えて終わることなく連鎖していきます。

■社会が生み出す子どもの貧困

今回は、ひとり親世帯の困難を中心に、なぜ子どもの貧困が生み出されるのか、そしてその貧困状況が子どもにどのような影響を与えているかについてお伝えしてきました。

日本の様々な制度は働いていること、家庭に大人が二人以上いることを前提としてつくられています。
そのような前提から外れてしまったとたん、私たちは苦しい状況におかれます。
今回はひとり親世帯に注目して、貧困が生み出される理由を考えてきましたが、働けなくなってしまったり、支えてくれる人が周りにいなくなったりしたら、その原因が自分の責任でなかったとしても私たちは困難を背負い込むことになります。
今の日本では困難を抱える人が一層困難を極める社会になっています。
貧困は社会によって生み出されているのです。

さらに、子どもに注目してみると、家庭の状況は子どもに大きな影響を与えています。
本人の責任に帰せられない原因によって困難を抱え、さらにそれが世代を超えて連鎖するという状況が明らかに存在しています。
LFAではこうした子どもの状況を問題視し、今の子どもの困難に寄り添うとともに、その子どもが将来貧困に陥らないために、そして自分の実現したい未来を子どもたち自身で切り開いていけるために活動を行っています。

さて、次回で子どもの貧困問題も最後です。
次回は、私たちがなぜこの問題に向き合わなければいけないのかについて考えます。
子どもの貧困に向き合うときの社会の責任とは何か、LFAの考え方についてお伝えしていきます!

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