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教育はどこまでが当たり前なのか

教育保障を考える

みなさん、こんにちは!
第8回LFA通信です。
今回は「教育保障」を扱います。

「保障」とは、権利や自由、安全を守る、ということです。
今の日本では憲法や教育基本法、学校教育法といった法律の形で教育が保障されています。

例えば、憲法では、

第14条第1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第26条第1項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
   第2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

という形で、法の下の平等が保障され、「ひとしく」教育を受ける「権利」が保障され、また義務教育に関しては「無償」が保障されています。
そして、こうした条項を具体化する形で、教育基本法や学校教育法があります。

このように見ると、日本では誰もが等しく教育が保障されているように思えます。

しかし、これまでのLFA通信では、経済的理由から受けたくても教育が受けられない子どもや、実質的に公教育の中でも十分な学校生活が遅れているとはいえない子どもがいること、そして今の日本には教育格差があることをお伝えしてきました。
法律では保障されているけれど、実際には本人の責任に帰せられない経済的な理由が、教育に大きな影響を及ぼしています。

とすると、教育は十分に権利として守られている=誰もが教育保障されていると言えるのでしょうか?
今回のLFA通信では、教育保障について、今一度考えていきます。

まずは、教育の不平等を是正する措置の一つである「就学援助」から教育保障を考えていきます。

 

■就学援助制度とは

先ほどあげた学校教育法の第19条では、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して、市町村は、必要な援助を与えなければならない」と定められています。
これを具体化した措置が「就学援助」です。

「就学援助」は、経済的理由で就学困難な子どもたちに学用品費や給食費、修学旅行費などの援助を自治体が行う制度です。
対象となるのは生活保護世帯と、準要保護世帯(生活保護世帯より困窮度が緩やかな世帯)です。
また、義務教育段階=小・中学生を対象としています。

先ほど、学用品費や給食費、修学旅行費などの援助を行うとあげましたが、何に対して援助を行うのかは、自治体によって様々です。
その外には、例えば通学費やクラブ活動費、生徒会活動費やPTA活動費などがあります。

 

■就学援助は”特別”な話ではない

就学援助の支援対象は様々です。
それだけ、学校で過ごすには様々な場面でお金がかかることがわかります。

そんな就学援助ですが、現在どれくらいの人が受給しているのでしょうか。
下のグラフをご覧ください。

就学援助受給率の推移

(出所:文部科学省(2017)「『平成26年度就学援助実施状況等調査』等結果」より筆者作成)

全体を通してみると受給者の割合は増加傾向にあります。
ここ数年は若干減少傾向にありますが、依然として高い水準にあります。
最新の平成26年度は15.39%になっています。
これは、およそ「7人に1人」の割合で就学援助を受給していることになります。

例えば30人のクラスの中であれば、4、5人の子どもが就学援助を受給していることになります。

就学援助は今や特別な話ではありません。

 

■就学援助の課題

今やなくてはならない存在となっている就学援助ですが、この制度にもいくつか課題があります。

一つには金額が不十分ではないか、ということです。
先ほど、就学援助で何に対して援助を行うのかは、自治体によって様々だとお伝えしました。
学用品費や修学旅行費等は90%以上の自治体で対象となっています。
その一方で、項目によっては、20%程度の自治体しか援助の対象としていないものもあり、援助の対象は自治体によってばらつきがあります。
学校に通うのに不可欠な通学関係の費用でも通学用品費80.2%、通学費26.3%となっています。
教育を受けるにあたって何にどれくらい使うのか、実際に子どもを通わせていなければ、なかなか想像がつかないかもしれません。
最近は制服の費用が高いことなども問題となっており、教育・学校にかかる費用がどれくらいの負担感なのか、より注目されていくこととなるでしょう。

二つ目は就学援助に地域格差がある、ということです。
まず、就学援助の事業主体は各市町村です。
そのため、就学援助の詳細については各市町村が決め、その財源は大部分が市町村負担になります。
さらに、現在国による就学援助事業への補助金から準要用保護世帯が外されています。準要保護世帯への就学援助費は全て市町村が負担することになります。

こうなると、市町村の財政力やその市町村で就学援助がどれくらい重要と考えられているのかによって就学援助の支給金額や支給対象項目、支給対象者は変わってきます。

例えば、就学援助を受けられる基準は自治体によって異なります。
その一つの指標となるのが生活保護受給となる基準額の何倍か、というものです。
大半の自治体が生活保護受給金額の1.1倍~1.3倍としています。

しかし詳しく見てみると、基準が低い自治体では1倍、つまり生活保護の基準と同等になっています。
一方で、生活保護の基準から1.8倍としている自治体もあります。
(小川正人(2012)『教育行政と学校経営』)
実にその差は倍近く、どこに住むかによって就学援助が受けられるかどうかが左右されています。

また、単純に受給率だけ見ても、上位と下位では大きな差があります。
就学援助受給率が一番高いのは高知県で25.0%です。
一方一番低い都道府県は静岡県で、6.68%です。

もちろん、都道府県で受給率が違う背景には、もともとその地域に経済的困窮の家庭が多いかどうか、などの就学援助以外の要因も関係しています。
また、その自治体がどれくらい熱心に就学援助の受給を進めているかも関係しているでしょう(実際、就学援助を周知する活動はここ数年で大きく改善しています)。

しかし、いずれにせよ生まれた環境に教育が左右される状況は是正しきれていないのではないでしょうか。
また、就学援助という”特別”な保障が当たり前になりつつあり、その保障も十分ではないとすれば、全体で必ず保障しなければいけないラインというものも考え直さなければいけないのかもしれません。

ピープルズ_質問や問いかけている

■”義務”教育のその先

さて、ここまでお話ししてきた就学援助は義務教育を対象としていました。
その先の高校についても少し触れておきましょう。

今や高校進学率は9割を超えています。
”準義務教育”と言われるくらい、高校に進学することは当たり前になっています。

しかし、少し驚くことですが、つい最近まで生活保護世帯の高校進学は制度上認められていませんでした。
ただし、”世帯分離”という方法をとれば高校進学は可能となっていました。
世帯分離とは、高校に進学する子どもを、手続き上、生活保護から外すことです。
世帯分離された子どもは、生活保護世帯ではなくなるので、進学が可能になるのです。
とはいえ、その分の保護費は打ち切られて生活が苦しくなるなどの問題があるのでなかなか難しいことです。
高校になんて進学しないで、義務教育を終えたらすぐに働くべきだ、そう考えられていました。

1970年代に入ると、全体的な高校進学率も8割程度になります。
高校に進学することはより給料のいい職業につける、将来の可能性が広がる、ということで、高校進学で自立が助長されるという判断がされるようになりました。
これにより、生活保護世帯でも資金を自分で調達することができれば、高校に進学することが可能になりました。

しかし、実際に資金を自分で調達することは容易ではありません。
結局、このように高校進学をしてもよいという判断がされるようになっても、それだけでは必ずしも進学することはできません。

2005年からは生活保護費で高校進学費の一部が支給されるようになりました。
ただし、その費用は生業扶助の”技能習得費”という区分での支給です。
つまり、子どもたちの進学・修学を保障するのではなく、自立援助の名目で行われています。
この点についても現在様々な議論が行われています。

いずれにせよ、現在も生活保護世帯の高校進学は容易ではありません。

【表:高校進学の内訳】

 

全体

生活保護世帯

全日制高校

94.1%

72.6%(※1)

パートタイム(※2)

3.7%

16.6%

専修学校

0.3%

1.6%

高校進学率

98.1%

90.8%

(出典:全体は文部科学省「教育指標の国際比較平成21年度」、生活保護世帯は「子どもの貧困対策大綱」(2013年データ))

(※1.全日制高校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部を含む/※2. 定時制高校、通信制高校)

第6回のLFA通信でもお話ししたように、高校進学率にも開きがあり、どのような進路をとるかも大きく変わっています。
また、生活保護世帯では中退率も高く、高校に進学したとしてもそれだけで安泰というわけではないことにも注意していただきたいです。

 

■必要な教育とは何か

進学率だけ見ても、高校に行くことは今や当たり前のものとなっています。
では、どれくらいの人が「高校に進学するべき」と思っているのでしょうか。

格差や貧困問題の研究で知られている阿部彩氏によれば、実に73%の人が「(希望する)すべてのこどもが」高校・専門学校までの教育を受けられるべきと回答しているといいます。
(阿倍彩(2014)『子どもの貧困Ⅱ』)
この結果に対して阿部氏は高校進学にあたって「経済的な理由で、進学を断念したり、中退することがないようにするべきという考えは、国民的な合意を得られているのではないだろうか」としています。

現在、義務教育は小・中学校です。
一方で、社会の状況を見てみると、高校進学はほとんど当たり前のものとなっています。
何をどこまで保障するのかはどこかの時点で一度決めたらそれで終わりではありません。
社会の状況、人々の価値観をもとに常に考え続けなければいけないことです。

もちろん、議論をするうえで、どうやって保障するのか、保障したらどんなことが子ども自身・社会に期待できるのか、具体的にどんな教育をするのか、などいろいろなことを考えなければいけません。
しかし、繰り返しになりますが、教育の何をどこまで保障するのかは時代や社会とともに考え続けなければいけないことです。

教育保障を考える

■教育の、何をどこまで保障するのか

今回、教育保障というテーマで、教育保障の実態と、教育保障の範囲が変化していくことを考えてきました。
教育はある程度は保障されていますが、それを教育の現場から実際に見てみるとまだまだ不平等が存在します。

また、教育の何をどこまで保障するのかも常に変わっていくことをお話ししました。
それはその時の社会状況に左右されるかもしれません。
同時にどんな教育を子どもたちに保障していきたいのか、ということも大事でしょう。
子どもたちの可能性を狭めず、広げるためにはどうすればいいのか。
子どもが持っている学びたいという前向きな気持ちにどう応えればいいのか。
全ての子どもがよりよく生き、社会で自立して生きる基礎を身につける教育とはどんなものか。
色々な目線から教育について考えていくことが、これから重要になっていきます。

LFAパンフ:学習する子どもと見守る教師

さて、これまでのLFA通信では子どもの貧困や教育格差、教育保障といいう大きな話をしてきました。
次回はLFAの活動の一つである学習支援が今全国でどういう動きをしているのかについてお話ししていきます。
子どもの貧困への注目の高まりとともに、全国的に学習支援の取組がどんどん増えています。
次回のLFA通信を機会に、今の日本で行われている学習支援について一緒に考えていきましょう!

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