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学校と学習支援

学校と学習支援

こんにちは!
LFA通信です。
今回は学校と学習支援の関係について考えていきます。

これまでLFA通信では学習支援のみならず、公教育(学校)についても取り上げてきました(学習支援については第9回第11回第12回を、公教育・学校については第10回をご覧下さい)。
学校と学習支援、これまで別々に取り上げてきましたが、この二つは全くの別物なのでしょうか。

おそらく、多くの方が子どもの貧困や教育格差について考えるときに、学校についても学習支援についても考えるのではないでしょうか。
LFAに参加してくれた大学生達の声を聞いてみても、子どもの貧困・教育格差といった社会課題を考える時に、学校と学習支援の両方に注目しています。
学習支援でやっていることは学校でもできないのか?という疑問や、学習支援だけでは社会的な影響が小さくやはり学校で何かすることが重要なのではないか、という声が聞かれます。
学校も学習支援も、同じく子どもを対象とし、教育を行っています。
確かに活動の場は違いますが、分けて考えることはできません。

そこで今回は、学校と学習支援がどのように関係し合っていて、両者がどのように関わることで子どもの貧困や教育格差といった社会課題の解決を進められるのかについて考えていきます。

■学習支援の必要性

第9回でお伝えしたように、現在学習支援事業が全国的に広がりを見せています。
こうした状況は、「個々の子どもが負う教育的不利を緩和させる個別的支援の必要性」の表れとも言えます。(注1)

これまで私たちが注目してきた”子どもの貧困”も、大きな教育的不利につながります。
貧困状態にある子ども達は、教育機会の制限や、経済的困難から不安定な環境に置かれて、勉強することはもちろん、自分を肯定することや将来を描くことも難しい状況にあります。

こうした背景から学習の遅れが生じたり、その他にも貧困状態であることに起因する様々な困難があったりと、学校で身につけるはずのものが身についていない子どもや、学校にいづらさを感じている子どもたちがいます。
(詳しくは第3回をご覧ください)

加えて、学校はその構造上、学校に合わない子どもの困難や、子どもが感じるいづらさを強化してしまう可能性があります。
例えば、学校の基本は一斉授業や集団行動です。
こうした活動は子どもたちがみな不利や困難がないという”同質性の前提”のもと行われます。
それによって、学校では子どもたちが背負う不利や困難はないものとして扱われ、必要なサポートをすることができない恐れすらあるのです。
(詳しくは第10回をご覧ください)
このように、学校で思うように学びが進められない、もしくは学校で一層困難を極める子どもたちがいます。
そのような中で、学習支援が一つの”セーフティネット”になりうるのです。

■学校での学びを”補償”する学習支援

学習支援はどういった点で”セーフティネット”になりうるのでしょうか。
まず、学習支援は子どもたちが学習し、学力を身につける場所となる”学びのセーフティネット”と言えます。
なぜ”学びのセーフティネット”が必要とされるのか、義務教育の制度の問題から考えてみましょう。

日本の義務教育は履修主義という仕組みを取っています。
履修主義とは、必要な出席日数を満たしてさえいれば卒業できる仕組みです。
この履修主義では、皆が同じ授業を同じ進度で受けられる、”平等”な環境に置かれている、ということになります。
一方で、ただ授業を受けさえすれば卒業できる、とも言えます。
そのため、実際には必要な学力が身についていないまま卒業してしまう場合もあるのです。

こうした学習の遅れを学校の授業のみで改善していくことは、なかなか難しいことです。
また、第10回でもお伝えしたように、学校の先生は多忙を極めていて個別に対応することが難しい状況にあります。

そこで、何らかの形で学習の遅れに個別対応する必要が生じます。
ここに学習支援の大きな役割があります。
実際、多くの学習支援が一斉授業ではなく、個別もしくは少人数での指導を行います。
また、学習のペースも様々で、子どもがわからないところから始めるなど、子どもにあわせた学習を行います。
学習支援を通して、学力を実質的に身につけていくのです。
こうしたことから、学習支援は”学びのセーフティネット”と言えるでしょう。

また、学習支援の役割は”学習”だけにはとどまりません。
子どもたちにとっての居場所になることも重要な学習支援の役割です。
ここでも、まずは学校についてみてみましょう。
学校で得られることは、みなさんご存じの通り学びだけではありません。
社会性を身につける、友人ができ人間関係が作られる、自分がどんな人間なのか、何がしたいのか考え、自分という人間を確立していく。
学校は子どもの時間の大部分を占め、子どもの成長を支える社会です。
しかし、先程お伝えしたように、学校で安心して過ごすことができない子どもたちがいます。
学校にいづらさを感じることは成長の機会や安心できる場所を欠くことになります。
さらに、そうした子どもたちの中には家庭でも安心して過ごすことができない子どももいます。

学習支援はそうした子どもたちにとっての居場所であり、精神的な”セーフティネット”です。
付け加えると、学習支援の場において個別対応で子どもたちに向き合うことで、子どもの見過ごされていた課題や困難を捉え直すことができます。それにより必要な支援につなげる、具体的なセーフティネットとしての役割もあります。

このように、学習支援には学校での学びから疎外され、教育的不利を抱える子どもたちに個別的な支援をすることで公教育を補完する側面があります。

■主体的に動く学習支援

ここまで、学校と学習支援の関係について、学校を学習支援が支える関係からお伝えしてきました。
しかし、このような形で学習支援が学校の補完にとどまることに批判的な意見もあります。
確かに、学習支援は根本にある問題ではなく、今ここにある問題にだけ対応している、対症療法的な側面があります。
また、学習支援という取り組みが公教育部門とは別の所から発生し、今これだけ広く必要とされること自体、公教育や社会の構造的な歪みを示しているのではないでしょうか。
困難を抱える子どもたちと最前線で向き合う学習支援は社会課題の当事者です。
起きている問題を受け入れるのではなく、常に社会の在り方に疑問を抱き、変化を迫っていかなければなりません。

このように公教育や社会の歪みが表れ始めている今、一つの可能性として「ケアする学校」という考えがあります。
繰り返しになりますが、学校はその構造的理由から集団にそぐわない子どもを”排除”してしまう場合があります。
また、学校には生まれた環境が子どもたちの人生を決めてしまう状況を、いつの間にか強化してしまう側面もあります。
「ケアする学校」とは学校が構造的に抱える排除の問題を乗り越える学校です。

「ケアする学校」とは、「子ども一人ひとりのウェルビーイングを目標に、それぞれの(子どもの)『生』を支える総合的な働きかけや発達保障に取り組む学校」と定義されます。
ウェルビーイング(well-being)とは、単に病気をしていないなどの状態ではなく、権利が守られ自己実現ができるような、身体的、精神的、社会的に良好な状態にある、つまり人間的に豊かな生活ができる状態にあることを意味する概念です。
また、「ケアする学校」では、子どもを集団の中の子ども、ではなく、一人の子どもとして捉えます。
「ケアする学校」では、一人ひとりの子どもそれぞれに対して学習だけではなく総合的に働きかけるために、教員を中心としながら、福祉・行政関係者、地域住民、NPO等と協働して活動することが求められます。
もちろん、学校でも「ケアの文化」を一部の人が持っているのではなく、学校全体で「学校全体でケアの文化」を作っていかなければなりません。
ここで重要なことは、この協働が単なる分業ではないことです。
ケース会議や日常的な交流を通して、関係者が学校や子どもに対する認識を深め、協力的な関係を築きながら子ども一人ひとりのウェルビーイングを目指して動いていくことが求められるのです。

この「ケアする学校」や「ケアの文化」を学習支援に引きつけて考えてみると、すでに類似した考えがあるのではないでしょうか。
学習支援は個別指導や少人数指導を通して、一人ひとりの子どもに目を向け、寄り添った指導が行われます。
また、学習支援は居場所でもありますから、「(子どもの)『生』を支える総合的な働きかけ」をしています。
全国的に見て学習支援は福祉部が所管している場合が多く、福祉機関と連携しやすいという強みもあるでしょう。

このように、学習支援では子どもたちを多面的に支えるための取り組みをすでに進めています。
そのノウハウだけでも大事な財産であり、問題解決のための手段になります。
また、学校をはじめとした関連機関・行政と学習支援が連携することで、子どもたちを総合的にとらえ、子どもを必要な支援につなげることができるでしょう。

さらに、今まで学習支援が積み上げてきた経験、考えてきたことをもとに様々な人と対話を重ねていくことも重要です。
対話の相手は学校、行政、民間等、様々あるでしょう。
対話も、ただ話をするだけではなく、学習支援の現場から見える社会の問題、解決方法をもとに政策提言につなげていくこともあります。

学習支援は、ただ社会の問題や学校で届かないところを補完するだけではありません。
社会課題の当事者として主体的な動きをすることで、根本にある子どもの貧困や教育格差といった問題の解決につなげることもできます。
これまで学習支援が積み上げてきた活動や知見を活かして、主体的に学校や福祉部などの行政、民間企業、社会と関係を結ぶことも、これからの学習支援に必要なことでしょう。

学校と学習支援

■社会課題の解決を進める学習支援

今回は学校と学習支援の関係について考えてきました。
学習支援は学校での学びを補い(補完)、子どもたちの教育を実質的に保障しなおしてくれます。
また、それだけではなく、この公教育の転換期において主体的に動き、社会課題の解決を加速する可能性も持っています。

こうした動きの中で、学習支援に必要なこととは、どのようなことでしょうか。
その一つが、様々な方面に”開かれている”ことではないでしょうか。
もともと、学習支援が対象とする子どもたちは様々な問題を背負っています。
この多元的な問題に対応するためには学習支援のみでは不十分で、関連機関との連携が必要になります。
また、ここまで見てきたように学校との連携も不可欠です。

このような学習支援の事業としての特性に加えて、学習支援がどのような政策であるのか、という点からも、開かれていることは大事になります。

社会(福祉)学者の湯澤直美氏は学習支援政策が対象者を分ける選別主義的な政策であることを指摘します。
そして、学習支援が広がる中で、「富裕層の子どもは有償の塾へ、貧困層の子どもは無償の塾へと振り分けられていくのであれば」、学校教育が元々持っている選別的機能はそのままになり、さらには「学校外教育の選別性を強化することにもなる」と言います。つまり、根本的な課題は解決されないまま、むしろ公教育に潜む選別の問題を強化してしまうかもしれないのです。
子どもたちに対する個別的支援は確かに必要とされています。
しかし、子どもの貧困の視点から考えたとき、ただ対象を選別した支援をするだけではなく、どのような教育であれば貧困対策として機能するのだろうか、根本にある社会構造の歪みを正すにはどうすればいいのか、という広い見方が必要です。
そのためには、学習支援がただ一つの事業として閉じてしまうのではなく、多くのことを発信し、社会に対して主体的に関わっていくことで社会課題の解決ができるのではないでしょうか。
学習支援は今目の前にいる子どもたちを見るとともに、社会全体を見据えていかなければなりません。

クロスする絵

さて、次回のLFA通信からはもう一度LFAの活動や考えを伝えていきます。
次回はLFAの活動を担う大学生の教師(学生教師)についてです。
今回は大きく取り上げませんでしたが、学習支援を通した人材育成もこれからの公教育・社会を担う人材を育てるという意味で学習支援の重要な役割です。
そのためにLFAの学生教師はどのような活動をしているかについて、次回はお伝えしていきます!


注1)松本伊智郎(2013)「教育は子どもの貧困対策の切り札か?」
注2)柏木智子・仲田康一編著(2017)『子どもの貧困・不利・困難を越える学校』

 

 

 

 

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