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こんにちは!
LFA通信では、前回・前々回と”子どもの貧困”問題をとりあげています。
前回の記事では、子どもの貧困の原因としてひとり親世帯の状況に注目しながら、社会構造に原因があることをお伝えしました。
(前回の記事はコチラ!→https://learningforall.or.jp/cms/2017/07/07/blog-004/)
子どもの貧困テーマの最終回となる今回は、社会全体がなぜこの問題に向き合わなければいけないのかについて考えます。
子どもの貧困問題を考えたときに、どのような立場や視点があるのでしょうか。
例えば、2014年から施行された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(以下、子どもの貧困対策法)では、このように明記されています。
’第一条
この法律は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。’
このように、法律では子どもの貧困対策の責任は国や地方自治体、つまり社会にあるとしています。
その一方で、子どもの貧困は個人の問題、関係する人だけの問題、という声もまだまだ一定数存在します。
先日、子どもの貧困率の最新版が公開されました。
子どもの貧困率は16.3%から13.9%に減り、およそ48万人の子どもが貧困状態でなくりました。
しかし、いまだに貧困状態にいる子どもが数多くおり、ひとり親世帯をはじめ厳しい状況に置かれる人の貧困率は高いままです。
日本の子どもの格差は先進国の中でもワースト10位で、解決しなければいけない問題は山積みです。
貧困の問題を個人の問題として社会から排除してしまっていいのでしょうか。
■社会が引き起こす子どもの貧困
前回詳しくお伝えしたように、子どもの貧困の背景には社会構造の問題が存在します。
具体的な様子については前回記事をぜひ読んでください。(https://learningforall.or.jp/cms/2017/07/07/blog-004/)
社会に目を向ける考え方に立つと、子どもたちや保護者自身に問題があるという考え方から離れ、子どもの育つ環境にこそ問題があり、子どもたちに安心して育てる環境を提供することが必要だとわかります。
環境さえ整えば、子どもたちは本来持っている好奇心や探究心に突き動かされ、自然と学びに向うはずです。
そういった環境を整えるのは社会の責任です。
一方で、子どもの貧困に対して「自己責任だ」という人も少なからずいます。
しかし、今の日本で自己責任論は成り立ちません。
山野良一氏によれば、自己責任論の前提には「能力や知識のみによって決まる完全競争状態」と「機会の平等」が必要といいます(山野良一(2008)『子どもの最貧国・日本』)。
つまり、全員が同じスタートラインから始まり、努力するチャンスが平等に与えられ、得られた能力や知識をきちんと評価される世の中でなければいけません。
山野氏はこれに対し、情報の格差、様々な差別や企業社会の現状、そして教育を受ける機会の不平等などを挙げて、今の日本に自己責任論が成り立つ状況にはないとしています。
やはり、子どもたちは生まれた環境によって人生を左右されてしまうのであり、そのことを”自己責任”という言葉で隠してしまうことはできません。
貧困を個人の問題だとする「自己責任論」の立場に立っていては、貧困の犯人探しが行われるばかりで、貧困の中で生きる保護者も子どもたちも抑圧されるばかりです。
■貧困問題を社会で解決する…?
さて、前回から子どもの貧困は社会構造に問題がある、と何度も繰り返してお伝えしてきました。
社会と貧困問題を切り離し、個人の問題に押し込めてしまう事はできない現実がこの社会にあります。
しかも、子どもの貧困を放置すると、社会に重大な損害が出ます。
例えば、子どもの貧困に対して何も対策をとらなければ、貧困世帯に属する人の生涯所得が合計で42.9兆円分も失われるという推計があります。(日本財団(2016)『子供の貧困が日本を滅ぼす』)
(※推計対象である貧困世帯に属する0~15歳が64歳になるまでに得る所得)
この損失は貧困世帯だけの問題ではありません。
得られるはずだった所得が減るということは、国全体の経済力が低下し、税収も減るということになります。
そして、税負担が増加したり、公共サービスが縮小したり、この社会的損失は社会全体に影響を及ぼします。
では、子どもの貧困に向き合う理由は社会構造の問題や社会への悪影響だけにあるのでしょうか。
もちろんこれらも大事な視点ですが、子どもの貧困問題を子どもの立場から見てみると、1人の人間としてその生や育ちが脅かされているという現実があります。
次は子どもの立場から子どもの貧困問題について考えてみましょう。
■子どものための子どもの貧困対策を
子どもたちは1人の人間として健やかに育つ権利があり、そのために学ぶ権利があります。
これは当然ながら持っている権利で、その権利は社会できちんと保障しなければならないものですが、子どもの貧困はその権利を脅かしています。
しかし、この子どもの貧困はなかなか見えづらい状況にあります。
これまで何度も”相対的貧困”という言葉を使ってきました。
この”相対的”、ということは他の人と比べて、ということです。
自分だけみんなと遊びに行けない、自分だけ塾に行けない、自分だけご飯が食べられない、自分だけみんなのものと同じものが持てない……
こうして貧困状態の人と貧困状態でない人が分けられていきます。
貧困があることにまなざしを向けなければ、どんどん子どもの貧困は見えづらくなります。
そうして”自分だけない”ことが積み重なり、社会がそれに気づかなければ、”みんなが当たり前に持っているものを持っていないことによって不利な状況に陥ってしまい、それが積み重なって人生全体で困難を背負う”ことになるのです。
そもそも、今の日本では衣食住もままならない、いわゆる”絶対的貧困”に近い状況におかれる子どもたちもいることを忘れてはいけません。
前々回のブログで示した「4人家族の場合、月収およそ20万円以下であれば貧困状態」という数値は貧困ラインの上限でしかありません。この数値よりもっと厳しい状況があります。
社会は子どもの貧困にまなざしを向け、子どもの育ちをきちんと保障しなければなりません。そのために、子どもの育ちを個人の問題にだけするのではなく、社会で子どもを育てるという考えが大事になります。
子どもたちの育ちを社会全体で支えるとともに、子どもたちの育つ権利の責任を社会全体で持つことが必要です。
そして、子どもの貧困対策は子どもの目線に立ち、子どもの権利を守るためになければいけません。
■子どもに備わる力を引き出す
LFAではここまでお話したように、生まれた環境に子どもの人生が左右されていることを問題視し、社会で子どもを育てるという考えを大切にしながら活動しています。
そこでは、かわいそうな子どもに不足している何かを補ってあげる、という施しの発想ではなく、そもそも子どもに備わっている力を引き出すという考え方で子どもに向き合うことを心がけています。
学習支援事業では、子どもへの安心安全な居場所提供・学習機会を提供することで子どもの学習環境を整えています。
同時に保護者へのサポートも行い、子どもが自らの力を十分に発揮できるようにしています。
また、昨年より始まった子どもの家事業では、小学校低学年を対象に居場所支援事業を行っています。
食事提供や読み聞かせ、学習以外にも積極的に普及活動や必要な機関との連携を行い、子どもの生きる環境を整えています。
二つの事業を通して、子どもたちは大学生、社会人、地域の人などたくさんの人たちと信頼関係を結びながら、学び、育っていきます。
■社会で子どもの貧困を解決する
冒頭で、「貧困の問題を個人の問題として社会から排除してしまっていいのでしょうか」という問いを投げかけました。
これに対する私たちの答えは「No」です。
何度も繰り返してきたように、子どもの貧困は社会構造に問題があります。それを個人の問題にしてしまうことは、貧困の中で生きる子どもたちや保護者を一層抑圧することになります。
また、社会で子どもの貧困を考えるときに、子どもの目線で考えることを忘れてはなりません。
子どもたちは貧困によって当たり前のように持っているはずの生きる権利・育つ権利を脅かされています。そのことを忘れずに、子どもの貧困対策を行わなければいけません。
全3回にわたって子どもの貧困についてお伝えしてきました。
様々なことをお伝えしてきましたが、子どもたちは厳しい状況に置かれていること、貧困は社会によって生み出されていること、この問題は社会的に解決しなければならないことを、これからも私たちと一緒に考えていけると嬉しいです。
さて、次回からはテーマが変わり、”教育格差”について取り上げます。
LFAのロゴには「教育格差を終わらせる。」という言葉が入っています。
タグラインにも入っている「教育格差」ですが、本当に教育格差ってあるの?みんな義務教育を受けているんじゃないの?と疑問を感じる方もいるかもしれません。
次回はそんな教育格差の現状についてお伝えしていきます。
(⇒次の記事はコチラ!)
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