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学びの場となる学習支援

2017.11.12

こんにちは!
LFA通信です。

今回のLFA通信ではLFAの学習支援で行われる”学習”に注目します。

現在広がりを見せる学習支援事業ですが、その活動内容は様々です。
名前の通り学習を中心とする事業のほか、居場所として子どもたちが安心できる空間を提供することを目指す事業、進路や生活の相談にものる事業、さらには遠足や宿泊活動を取り入れている事業もあります。
このように、学習支援事業の活動内容は”学習”だけにはとどまりません。

こうした活動はどれも子どもの学び・育ちにとって大事な要素です。
その中でも今回は事業の名前に入っている”学習”を取り上げます。
学習は、この事業が教育支援である以上欠かせない要素です。また、学習することは子どもの権利であり、将来を切り開いていく力になるものです。

もちろん、”学習”も事業によって様々です。
そこで今回は私たちLFAの学習支援がどのように行われているのか、何を大切にして学習支援を行っているのかについてお伝えしていきます。

■LFAの学習支援プログラム

LFAの学習支援プログラムの対象は、”困難を抱えた子どもたち”です。
長期プログラムでは週1回、2~3ヶ月間の指導、短期プログラムでは5日間連続の指導を行っています。

学習支援プログラムに通う子どもたちは小学校高学年の児童から中学生です。
プログラムでは主に英語と数学(小学生は算数のみ)を指導します。
子どもたちを指導するのは、大学生の教師(学生教師)です。
学生教師1人に対して、子どもは1~3人です。

LFAの学習支援プログラムでは、笑顔と結果を大切にしています
このことはLFAの重要なビジョンとして様々な場面で言われます。
では、笑顔と結果とは具体的にどのようなことなのでしょうか。

■子どもたちにとっての安心空間

LFAの学習支援プログラムは、子どもたちにとって信頼できる、安心して通うことのできる空間です。
そのために、学生教師は子どもたちが安心できる文化をつくります。

安心できる文化は様々な場面で培われるものですが、やはり日々の子どもとのコミュニケーションが大事です。
そのために、指導中はもちろん、挨拶や休み時間など、子どもと関わるすべての場面で安心できる場所であることを伝えます
あなたのことを見ているよ、あなたはいいことをしてくれたね、と積極的に伝え、たくさん褒めることで、子どもにとっての心の居場所になります。
もちろん、叱らなければいけない場面もあります。
しかし、叱るのは子どもの成長を促すためです。
子どもが叱られたことで相手に萎縮してしまったり、反発してしまったりするのではなく、叱られたときのことを真剣に受け止め、行動を変えるためには、ベースとして普段から信頼関係を築き上げることが不可欠です。

同時に、子どもの意欲を引き出すようなコミュニケーションをしていきます。
子どもの意欲を引き出すには、まずその子どもを知らなければいけません。
何が好きなのか、どんなことで悩んでいるのか、何ができるようになりたいのか……。
子どもがする行動の裏にはどんな意図があるのだろうか……。
子どもの声、様子、すべてに耳を傾けます。
そして、子どもができるようになったこと、子どもが嬉しかったことなど、子どもの日々の変化や喜びを積極的に見つけ、褒めたり一緒に喜んだりします。
安心でき、さらに自己肯定感が満たされる環境でこそ子どもたちは成長します。

こうしたコミュニケーションの考え方の根本には、”子どもたちは素晴らしい人生を送るために生まれてきている”というものがあります。
ここまで書いたLFAの学習支援プログラムで行われるコミュニケーションを見て、本当に意味があるのかと思う人や、些細なことまで褒めたり喜んだりするのはくどいのではないか、と思う人もいるかもしれません。
しかし、LFAの学習支援プログラムに通う子どもたちの多くが、社会や身の回りの環境によって素晴らしい人生を送ることができていません(詳しくは第5回参照)。
些細なこと、当たり前のことのように思われることでも、それが社会や環境によって損なわれているからこそ、意識的に”安心してここに通えるんだ”、”あなたは可能性の原石なんだ”、ということを伝えていかなければならないのです。

LFAの学習支援プログラムは子どもたちが安心して過ごすことができる空間です。
そしてその安心が土台となって、子どもたちの挑戦を後押しできるのです。

居場所(加工済み)

■結果にこだわる学習支援

ここまでは”笑顔”の話をしてきました。
しかし、LFAでは学習の支援をする以上、学習の”結果”にもこだわります。

子どもたちは困難を背負うと同時に、厳しい現実に立ち向かっています。
その代表的なものが高校受験です。
どのような高校に進むのかは、その先の将来を大きく左右する選択であり、人生の岐路になります。
また、経済的に厳しい状況にあれば、公立の高校に行けるかどうか、ということも重要になります。
子どもたちはこの現実に向き合わなければいけません。
そして、自分の道を切り開くためにはやはり”結果”が必要になるのです。

そのため、LFAの学習支援では、まず一人一人に合わせたゴールを見据えてカリキュラムや教材を作成します。
また、一人の子どもの目標に絞ってみても、いくつかのゴールが想定できます。
例えば、高校受験が最終的なゴールだとすれば、そこから逆算して、まず学校のテストや模試などの中期的なゴールがあります。さらに、その手前の短期的なゴールとして、一回一回の授業で実施するまとめテストというゴールもあります。
子どもたちそれぞれのゴールに向けてどんな目標が立てるか、支援の中で子どもたちと一緒に考えていきます。

そして、そのゴールにたどり着くために、一人一人の子どもに合わせたカリキュラムや教材、指導方法を考えます。
子どもたちは一人一人理解度や得意・不得意が違います。
そのため、効率的に学習するためには、それぞれの状況に合わせる必要があります。
また、どのような学習方法があっているかということも子どもによって違います。
例えば、学校で行われる学習のほとんどが文字や数字を使って行われますが、文字や数字を使って学習することが全ての人に適しているわけではありません。
中には絵を使って理解するのが得意な子や、音を聞くことや体を動かすことで理解が進む子、自然のものに触れることで理解が進む子など、様々な子どもがおり、どのような学習方法が適しているかは人によって異なります。

このように、LFAの学習支援は”結果”にもこだわります。
そして、結果を出すために現場では一人一人の子どもにとことん向き合い、その子に合った学習を進めていきます。

スケッチブックを用いた学習(加工済み)

■学習支援のその先へ

さて、ここまでLFAの学習支援では何を大事にしているのか、そのためにどのようなことをしているのかをお伝えしました。
しかし、ここでさらに学習支援のその先のことを考えてみたいと思います。

そもそも、学習支援はその時間だけで完結することではありません。
支援の教室で先生が隣にいる時間だけ学習をするのではなく、学校での学習や日々子どもたちが自分で行う学習につながってこそ、学習支援の価値があると考えています。
さらにその先には受験など進路を左右する場面があり、やがて子どもたちは社会に出ていきます。
先ほどの”結果”の話にも通ずることですが、子どもたちが持つ可能性を広げ、自らの進む道を選びとれるようにならなければいけません。

そのため、LFAでは子どもたちに”自律した学習者”になってもらいたいと考えています。
自律した学習者になるためには、子どもたちが自分で学習のサイクルを回せるようになることが必要です。
学習のサイクルとはPlan(計画を立てる)⇒Do(学習する)⇒See(振り返る)を繰り返すことです。
それぞれの段階やこのサイクルを回すことはすぐにできることではありませんが、繰り返し行うことによって次第に身につきます。
Planでは、取り組みたい、目指したいと思える目標を設定するとともに、具体的な学習計画を立てます。
Doでは、学習を進める前提となる知識・スキルを身に付けるとともに、この学習は記憶や理解を進めるためなのか、それとも記憶や理解の度合いを確かめるためなのか、といった学習の段階を把握します。これによってより効率的に学習が進められます。
また、学習をするにあたっては、自分の頭の中で考えるだけではなく、図や表を書くとわかりやすいのか、先生や友達に聞いたり、話し合うことで解決するのか、どんな教材を使うといいのか、といった何かに頼る方法を知っていることも必要です。
Seeの段階では、単純にできたかできなかったかだけではなく、Planで立てた目標が達成できたのか、達成できた/できなかった原因はどこにあるのか、ということを振り返ります。これによってより学習が意味のあるものになります。

このように「学習のサイクル」とひと口にいっても、その中では様々なことが行われています。
計画を立ててね、問題を解いてきてね、できたかどうか確認してね、と言うだけでは本当に効果のある学習にはなりません。

PDSサイクルのイメージ

LFAでは学習支援の様々な場面で、”自律した学習者”になるために、子どもたちが自分で学習のサイクルを回せるようになることを意識しています。

例えば、毎回の宿題指導の場面ではまず、宿題をやること、繰り返し学習をすることでどんな意味があるのかを子どもたちに伝えます。
そこで子どもたちが納得したうえで、宿題のやり方を伝えます。
それは学習の仕方を身に付けると同時に、計画を立てる練習にもなります。
これによって、子どもたち自身が自分の学習状況を確認できるようにします。
そして、宿題指導の時間は、教師が宿題を出す時だけではなく、子どもたちが宿題をやってきてくれた時にも大事な役割を果たします。
宿題を通して、前回の授業で何が身について、何がまだわかっていないのかを確認し、その原因を一緒に考えます。また、目標を再確認することもできます。
今回は宿題指導の場面を取り上げましたが、これは普段子どもたちと交わす会話の中でもできることです。
目標を再確認し、達成できていることは何かを見つけ、伝え、大きく褒める。それを繰り返すことで、子どもたちは自信を身につけ、自律した学習者へ一歩ずつ近づいていくのです。
子どもと関わる全ての時間に意味があります。

LFAはこのように、学習支援のさらにその先も常に意識し、子どもたちに自律した学習者になってほしいと考えます。
ただ支援をするだけでなく、支援を受けることで、自分自身で考え、選択し、その結果に責任を持ち、振り返りながら成長できるようにサポートしています。
自分でできる!(加工済み)

 

■”学び”の伴う学習支援

今回のLFA通信では、LFAの学習支援がどのように行われているのか、何を大事にしているのかをお伝えしてきました。
LFAの学習支援は子どもの笑顔を引き出すとともに、結果を出す学習支援です。
そして、学習支援の場を離れても子ども自身が自ら学び、成長できるようになってほしいと考えています。
以前、LFAのある支援現場で、「指導期間が終わったら誰が子どもたちを褒めるのだろうか」、と学生教師が疑問を投げかけました。
この疑問を出した学生教師が出した答えは、「子どもたちを褒めるのは子どもたち自身ではないか」というものでした。
学習支援を通して、自分のいいところをたくさん見つけ、どうすれば結果が出せるのかを知る。こうして子どもたちは自ら学び、成長する土台が身につくのではないでしょうか。そして、これをきっかけに子どもたちは自分で自分をもっとよくしていけるのではないのでしょうか。

最近、世界銀行(途上国を対象に資金や技術の援助等を行う国際機関)が「学習危機」に警鐘を鳴らし、学習を伴わない教育は貧困の撲滅や教育機会の均等には役立たなく、さらなる社会的危機を招くという指摘をしました(『世界開発報告(WDR)2018:教育と学び-可能性を実現するために』)。
世界銀行は、学校に通っていても読み書き算数さえできない子どもがいることを明らかにしています。
そして、貧困や紛争、ジェンダーや障害など、そもそも別の困難を抱えている子どもたちはさらに追い込まれることになります。
世界には深刻な教育格差が既にあるにもかかわらず、学びが伴わない教育機会は、この格差を乗り越えるどころか加速させてしまうのです。
このことについて、世界銀行は「学びに結びつかない学校教育は、開発機会を無駄にするだけでなく、世界中の子供や若者に対する不当な扱いである」としています。

世界銀行のレポートでは主に途上国のことが取り上げられていますが、日本でも同じことが言えるのではないでしょうか。
日本では、現在7人に一人の子どもが相対的貧困状態におかれています。困難を抱えている子どもたちがこれだけいる中で、私たちは教育・学習の機会を設けるだけではなく、その中身まで責任を持たなくてはなりません。
世界銀行のレポートでは「学校に通うことがすなわち学習というわけではない」と言われていますが、学習支援でも同じことが言えるでしょう。

さて、次回のLFA通信では、学習支援と公教育の関係を考えていきます。
何度かお伝えしてきたように、学習支援の活動を社会課題の解決に向けてより効果的なものにするためには、公教育とどう関わるかを考えていかなければなりません。
学習支援と公教育の関係について、一緒に考えていきましょう!
(次の記事はコチラ!)


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