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【虐待死を考える】心愛ちゃん虐待死事件は防げなかったのか~虐待に至る前にできたこと~

2019.2.13

みなさんこんにちは。Learning for All 職員の藤原です。
今回のブログでは、千葉県で起きた虐待死事件について考えていきます。

ニュースの概要

先日、千葉県でこのような事件が報道されました。(朝日新聞デジタルより)

千葉県野田市のマンション一室で小学4年の栗原心愛(みあ)さん(10)が死亡し、傷害容疑で父親が逮捕された事件で、心愛さんが2017年に通っていた市内の小学校に「父親からいじめを受けた」と訴えていたことが26日、捜査関係者への取材でわかった。心愛さんはその後、県柏児童相談所に一時保護されたという。県警は心愛さんが、繰り返し虐待されていた可能性があるとみて調べている。

父親だけではなく母親も逮捕される事態となったことや、関連機関の不手際などが注目され、連日報道が続いています。

本記事では、家庭を取り巻く環境の変化から問題に迫っていきたいと思います。

沖縄に住んでいた頃の家族

沖縄タイムズによると、心愛ちゃんは父と母と心愛ちゃんと妹の4人家族で、元は沖縄に住んでおり、のちに父親の仕事の関係で千葉に引っ越したことがわかっています。

沖縄県に住んでいた頃には、母方の祖父母との関わりもあったそうです。

また同記事では「2017年まで一家が暮らしていた沖縄県では、栗原容疑者の妻が『夫から家庭内暴力を受けている』と、児童相談所に伝えていた。」とも報道されており、児童相談所との繋がりはすでにあったことがわかります。

さらに心愛ちゃんは当時、地元の公共施設での無料塾にも通っていました。講師は「こつこつと勉強を頑張る明るい子。3年生になってから『県外の学校に行く』と寂しそうに話していたのを覚えている。」と話していたそうです。

このように沖縄にいた頃には母親にも子どもにも親類や地域との関わりがあったことがわかります

千葉に引っ越してからの孤立

一方、心愛ちゃんへの虐待は勇一郎容疑者の実家がある千葉県野田市に心愛ちゃんを連れて転居してから始まったようです。

朝日新聞デジタルによると、母親は虐待が始まった時期について「多分千葉に引っ越してきて、しばらく経ってからだと思います」「千葉には誰も知り合いいないので、誰にも相談できなかったし、警察に行こうとした事もあったけど、結局行けませんでした」と話していたといいます。

千葉に引っ越してから家庭の孤立が深まっていたことがわかります

専門機関の対応

一方、報道では児童相談所や学校という専門機関の対応が問題視されています。

NHKニュースによると、「心愛さんはおととし11月、小学校のアンケートに父親の暴力を訴え、児童相談所に一時保護されましたが、その際、PTSDの疑いがあると診断されていた」ことがわかっており、PTSDの診断が出ていながらも一時保護を解除したという児童相談所の対応には疑問が残ります。

また、小学校で実施されたいじめ調査のアンケートに心愛ちゃんが「おとうさんにいじめられている」と書いて学校にSOSを求めていたのにも関わらず、そのアンケートをあろうことか父親自身に渡してしまったこと(毎日新聞より)にも、批判が集まっています。

今回の事件では、家族の孤立と専門機関の不手際等が重なり心愛ちゃんが虐待死に至ってしまったと言えるでしょう

問題の本質とは 

専門機関の不手際は、確かに問題です。学校から見た「注意すべき子ども」と児童相談所から見た「注意すべき子ども」は違っていたのかもしれません。注意して手を差し伸べるべき子どもについて、子どもに関わる機関同士が目線を揃えていることが必要でしょう。

しかし、課題のもう一つの要因は、母親の吐露にもみられたように子育てに対してサポートできるようなネットワークが形成されていなかったことにあると考えます。

数ヶ月前に報道された目黒区での虐待死事件でも、同じようなことが言えます。

目黒区の事件では、父親が5歳の娘 結愛ちゃんを日常的に殴っており、また十分な食事も与えていなかったこと、また児童相談所の一時保護の解除の後に死に至ったことがわかっています。

このときも、児相の対応に批判が集まっていました。しかし、重要なのは児相を責めることや児相と警察と学校に子どもを任せることではなく、子育てを皆でサポートし、虐待に至る前に食い止めることなのではないでしょうか。

以前目黒区での虐待事件に際してお届けした記事では、以下のようにまとめています。

今回の事件の報道への反応として、警察と児童相談所の連携を強化するべきだという声がたくさんあがっていました。ただ、私にはどうしてもそれで今回のような事件を防げると思えません。……虐待の疑いのある世帯と児童相談所・警察だけが向き合う状態にせず、多様な機関や人が世帯と柔軟に長期的に関わっていくべきではないでしょうか?世帯との接点を増やし、相談できる人・信頼できる人を増やしていくことでしか、家庭の中の様子はわかりえませんし、適切な支援・介入についても判断できません。

もし家族が地域の人々や信頼できる親類・友人に頼ることができていれば、虐待は防げていたかもしれません。事態が深刻化し児童相談所や学校が介入するより前に、子どもが健全に育つ家庭になっていたかもしれません。

子どもは地域・社会の未来を担う存在です。

専門機関の対応を修正するとともに、専門機関に任せきりにするのではなく、同じ社会に生きる人として周りの人が子どもを見守っていき、子どもや親の支えになるような地域のあり方を考えていくことが大切です。

虐待が起きない社会、ひいては全ての子どもが健康に育つことのできる社会は、子育てを家族だけのものにしない社会ではないでしょうか。

困難を抱えている子どもや家庭に対して、その困難を周りの人とともに乗り越えていけるような社会を目指していきたいと私たちLearning for Allは考えます

まとめ

子どもの支援に関する課題は、一つの機関だけでは解決することができませんし、どんな家庭でも一人で子育てをすることはできないでしょう。

全ての子どもが健全に育つために私たちは何ができるのか。 

この記事が未来に向けた議論の端緒となれば幸いです。

・参考文献
朝日新聞デジタル「「父親からいじめ」訴え 繰り返し虐待か 千葉・死亡の10歳」
毎日新聞「千葉・野田の女児死亡 父から暴力「先生、どうにかできませんか」 心愛さん、訴え切々 アンケート公表」

FNNPRIME「「暴力はうそ」父親が書かせた文書を児相に提示…その後、心愛さんは一時保護解除されていた」

沖縄タイムズ「虐待死の心愛さん、沖縄に住んでいた 「娘を返してくれない」と相談も」

朝日新聞デジタル「どうすることも… 逮捕の母、LINEで吐露 小4死亡」

NHKニュース「小4女児死亡 一時保護の際 PTSDの疑いと診断」

朝日新聞デジタル「5歳女児が死亡、父「数日前に殴った」 傷害容疑で逮捕」

Learning for All 「児童虐待で亡くなる子どもをなくすために我々にできること(1) – 親叩き・児相叩きを超えて-」

 

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