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「自立」とは何か〜子どもの貧困と私たちのあり方〜

2019.3.29

みなさんこんにちは。Learning for All職員の藤原です。
今日は、Learning for Allが目指す社会について「自立」の考え方を中心に紹介していきます。

突然ですが、ここで質問です。
この記事を読んでいるあなたは、「自分は自立している」と思われますか?
ちょっと10秒ほど考えてみてください。
……

どうでしょうか?
自分で生活費を稼いでいる社会人だから自立している、という方、仕送りをもらって学校に通っているから自立ではないと思う方など、様々だと思います。

経済的自立ー学習支援と関連してー

こういう時に想起されやすい自立は自分で食べていくためのお金を稼ぐ、という「経済的自立」ではないでしょうか。
自分で生活するためのお金を得るためには一般的には進学や就職が必要になります。受験勉強や就職活動をする理由も、経済的自立のためという側面があると言えます。

子どもに対して勉強を教える学習支援も、将来の高校進学や就職を目指しているという意味で「経済的自立」を目標とするものです。最低限、衣食住に困らず自分の力で生きていけるようにという理念のもと行われるものと言えます。


実際、生活保護法第一条にも、「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」と書いてありますし、学習支援を法的に位置付けている生活困窮者自立支援法にも「自立」という言葉が使われています。

この意味の「自立」は自分の力だけで生きていくこと、食べていくことを想起させます。
自分の努力によって、進学したり就職したり…個人の努力が結び付けられやすい概念でもあります。

また、経済的自立の側面として、知っておくべきことがあります。

それは、経済的自立のみを良しとする考えが行きすぎると「自立していなければならない」という意識が生まれるということです。
1人で努力して、就職して、稼いで……という自分で生きていかなければいけないという意識は、自分1人で何とかしなくてはいけない、また努力できない他人はダメだという強迫観念を産みます。

経済的自立のみの「自立」概念では、働けない状態にある人たちが包摂されることはありません。
働けない状態にある人たちが自立できない人として常に排除されてしまうことになり、そしてそれは、今経済的に自立できている人々が、何かの拍子に経済的に自立できない側に行った際に向けられる目線でもあります。

権利の主体としての自立ー居場所支援と関連してー

実は「自立」にはもう一つの意味があります。それは、権利の主体としての自立です。
自分のことを自分で決めることができ、当たり前の権利を主張することができる状態のことを言います。

『精神保健福祉用語辞典』(中央法規出版)によると、以下のような例が挙げられています。

他人の助けを借りて15分で衣服を着て仕事に出掛けられる障害者は、自分の衣服を着るのに2時間かかるため家にいるほかはない障害者より自立している。

つまり、どれだけ他人に頼っても「自分の意思を持ちそれを実現できる状態」を自立としているのです。
体に不自由のある方が誰かに頼って行きたい場所に行けたり、子どもが友達に自分のやりたいことを主張して、一緒に遊びにいくことができたりすることなどです。

その前提として、自分のことを権利の主体として尊重することができることが必要です。
衣食住が適切にあること、暴力や迫害から逃げて自分を守ること、誰かの強制ではなく自分の意志を主張すること、そしてかけがえのない一個人として尊重されることを求めることができるということです。

Learning for Allが行なっている子どもの家事業などの居場所支援は、主にこちらの意味の「自立」を目指すものとも言えます。
大人同士も子ども同士も対等に互いを尊重したコミュニケーションをとったり、その子どもが愛されていることや可能性に満ちていることを感じられるような学びの場を作り、子ども自身の強みを見つけ、それを認識して伸ばしていく。

大人であっても、こちらの「自立」は日々大切にされているでしょうか。
何か能力を身につけることとは少し違う、権利の主体としての自立は、経済的に自立できている人を含む、私たち全員にとって必要なものにも思えます。

誰かに頼りながら、自分自身を大事にして当たり前の権利を行使する。もう一つの自立にはそのような意味があるのです。

二分されない支援を目指してー二つの自立と学習支援・居場所支援ー

今ご紹介した二つの自立概念は対立しやすいものです。
よく言われる「いい学校に行けるように勉強した方がいい」「自分で食えるようになったら一人前」という言説と、「あなたはありのままでいいんだよ」「誰しもいいところがある」という考えは一見相反するように思いませんか?

しかし、二つの自立を目指すそれぞれの支援は、対立するものでもはっきりと二分できるものでもありません。
進学や就職をしたい子どもであっても、自己肯定感がなかったり安心安全の空間がないと努力をすることは難しいです。また学習支援で勉強することによって自分に自信がついたり、信頼できる大人と出会うことで自分自身を認められるようにもなることもありますし、居場所支援において自分を表現する力を得ることで進学や就職のときに役立つかもしれません。発達の段階や状況、当人が求めるものによっても、必要な支援は異なります。

私は、貧困を脱出したのちに向かう先・目指す方向は、金銭面でもそれ以外でも何かあった時に支え合える関係性を持ち続けていることだと思います。
互いが「自立」できるように時に依存しながら支えあっていく。
かわいそうだから、自分とは違うから、助けるのではなく
同じような権利を持ち同じ現実に生きる仲間として考える姿勢が必要だと思います。

Learning for Allが取り組む現場では、経済的にも精神的にも困難を抱える子どもたちに出会います。
そして、学び=経済的自立、育ち=権利の主体、つながり=他者とつながり支えられる力 を身につけられるような支援を届けています。誰しも一人では生きられません。

子どもの貧困を解決するための「自立」へ向けた支援を考えていくことは、
私たち大人も含めたあるべき「自立」を考えることにも繋がるのではないでしょうか。

そんな社会を作ることができればいいと、私は思います。

参考文献
牧園清子「福祉政策における「自立」概念の研究」松山大学論集、2009年
生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)(平成三十年法律第七十一号)
『精神保健福祉用語辞典』中央法規出版、2004年

 

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