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【教員の多忙化】〜日本の教員が忙しい理由〜

2019.8.26

【教員の多忙化】〜日本の教員が忙しい理由〜

みなさん、こんにちは。Learning for All 職員の福田です。
先日、埼玉県の公立小学校教員が残業代の支払いを求めて裁判を起こしました。(産経新聞の記事)

以前から学校教員の過酷な労働環境は問題視されており、最近は「働き方改革」のあおりを受けて話題になることが多いようです。
そこで今回のブログでは、日本における学校教員の多忙化についてお伝えしたいと思います。

ーどれくらい忙しいのか。

では実際に、日本の学校教員はどれくらい忙しいのでしょうか。

平成28年度の文部科学省「教員勤務実態調査」によれば、小学校教員の33.5%、中学校教員の57.7%が週60時間以上勤務(20時間以上の残業)、つまり月80時間以上の過労死ラインを超える時間外労働をしていることがわかります。

(出所) 文部科学省「教員勤務実態調査(平成28年度)」より引用

また、これらは自宅残業を含まない勤務時間なので、それが追加されることを考えると労働時間が異常な長さであることが伺えます。

ー忙しさの原因は何か。

「そもそも教員という仕事はそういうものだ」というのは無理があります。実際に、諸外国の勤務時間平均は38.3時間であり、労働時間の異常な長さは日本に特有なものだと考えられます。

では、忙しさの要因はなんでしょうか。

まずは労働時間の内訳から見てみます。

(出所) 文部科学省「学校や教職員の現状について」より引用

諸外国と比べた場合に特に顕著なのは、「課外活動の指導に使った時間」の項目で、1週間だけで諸外国と5.6時間の差があります。ここでいう課外活動というのは、「部活動」「委員会活動」「修学旅行」「行事」など、授業ではないが生徒と一緒にする活動が該当します。

ちょうど先日まで甲子園が行われていましたが、部活動は教員の大きな負担になっています。私たち大人もそれが当たり前の学校で育ちましたから、社会的にもそれが期待されてしまいます。
部活以外にも、生徒たちの私生活や家庭にも介入し問題の解決を試みるような学園系のドラマが示すように、私たち日本人は学校の先生に対して過剰な期待を抱いていることがわかります。

実際に、日本教職員組合の調査によれば、スコットランドやイングランドなどでは「教員以外の学校職員」が生徒と関わりを持つ多くの教育活動を担っていることがわかります。逆に日本ではこうした生徒との関わりを教員が持たねばなりません。

(出所) 日本教職員組合「国際比較で見る教職員の働き方」(2009)より引用

教育学者の妹尾昌俊さんは、学校の先生が忙しい理由として「子どもに対する善意」「伝統と前例」「社会・家庭からの期待」「教員の少なさ」の4つを指摘しています。
多くの学校で行われている部活動、清掃や委員会活動や、修学旅行などについては、文部科学省は細かい指示を出しているわけではありません。なので極端な話をすれば、例えば修学旅行に行く必要はないですし、部活動をしていないからといって何か法的に罰せられるわけでもありません。

もちろんこうした活動には一定の教育的意義があり、こうした活動に実際に意義を見出す教員もいることは想像できます。しかし、これらが教員の労働時間を過剰なものにさせているのであれば、「これまでそうだったから」という前提にとらわれずに本当に必要なのかどうか、必要だとしてそれを教員の負担にするべきかどうかは議論されるべきかもしれません。

また、これらの社会的・心理的な要因以外にも法的・制度的な課題があります。

例えば、本来払われるべき残業代が支払われないことも、労働時間の管理が徹底されないことの理由の1つではないでしょうか。

学校教員の残業や給与について定めた、給特法(
公立学校教育職員の給与等に関する特別措置法)という法律があります。
この法律によって、学校教員は、給与の4%に当たる残業代が支払われますが、業務外での認められる労働は「校外実習に関する業務」「修学旅行など行事に関する業務」「職員会議に関する業務」「非常災害の対応業務」の4種類に限られ、それ以外は「自主的な労働」とみなされて給料には計上されません。

部活動などには手当がつきますが、その手当も微々たるものです。例えば、東京都では土曜日・日曜日に4時間以上部活動の指導をした場合に4,000円が支払われますが、4時間未満では支払われず、4時間以上なら仮に8時間の指導でも4,000円です。

ー学校教員が忙しいことによる課題

さて、学校教員が多忙であることはもちろんそのこと自体が非常に大きな問題であり、それで疲弊する教員が多いことは十分に事態が改善されるべき理由です。
ただ、教員の多忙化が授業の質や生徒の学習成果にも影響が出ているのであれば、それはさらに改善されるべき問題となります。

(出所) Benesse「教員の勤務実態と意識」より引用

忙しさが直接に授業の質や学力に影響しているというデータはありませんが、学校の教員の悩みの多くが「教材準備の時間が十分にないこと」「生徒への対応が難しいこと」です。

もちろん、時間がありさえすれば解決するわけではありません。ただ、これだけ悩みを抱えている教員がいるというのは、それだけ生徒への指導・対応の部分に教員方が歯がゆい思いを抱えているということです。

Learning for All の教室に通う生徒を見ていても、複雑な家庭環境を抱えている子や発達の特性を持った子が学校に多く通っていることが感じられます。
その生徒たち一人一人に適切な対応をするのが難しいくらいに、多くの余裕が学校の教員から奪われてしまっているのが現実です。

ーどのような改善が行われてきているか

必要なのは、第一に忙しさの解消であり、同時に忙しさに対する報酬の適正化でしょう。

どのような対策が行われているのでしょうか。
例えば、忙しさの大きな要因である部活動について、いくつかの対策が行われています。

文部科学省は平成29年度より「部活動指導員」を制度化しました。これは、学校教員に代わって部活動の指導をする人員を配置する制度です。
(今までも「外部指導者」と呼ばれる教員以外の指導者がいましたが、校内における実技指導のみが可能で、外部の大会引率などはできず、負担軽減よりも実技指導で成果を出すことが目的とされています。)
しかし、例えば運動部に限ると指導員数は平成30年度で全国1040名にとどまり、全国の部活動の数を考えれば焼け石に水と言わざるを得ません。

抜本的な改革ができないのであれば、やはり残業代を支払うしかないのですが、おそらくそれも難しいでしょう。

現在の教員の残業代を適切に支払った場合に国と地方自治体をあわせて9000億円の予算が必要とされています(逆に言えばそれだけ残業をさせてしまっています。)その9000億円が用意できるかは非常に疑わしいでしょう。
やはり、そもそもの業務量を減らすしかないのであれば、部活動や修学旅行など様々な「当たり前」を見直さざるを得ないのかもしれません。

ー最後に

ここまで、学校教員の忙しさやその原因について考えてきました。
子どもたちの様々な活動の機会を保障することが、少なからず教員の生活を圧迫することになってしまっていることが見えました。
しかし、本来は「教員の権利」と「子どもの利益」は天秤にかけてどちらかをとるものではなく、むしろ前者が欠ければ後者が損なわれるものとして考えるべきものです。
教員の権利と子どもの利益を共に守るためには、学校が担う役割を教員の数に対して適切な重さにすること、そしてその役割を地域や家庭が担うことが求められます。

Learning for All でも地域での包括的な支援の取り組みを行なっていますが、子どもたちは学校以外の場でも大きく学び、成長する機会を得ています。
また、学校外の拠点から学校へと情報提供をしたりなども少数ですが行えています。
こうした教員の過労という問題を機に、学校が地域に開かれた場になり教育の役割を学校に閉じ込めない社会になることが求められているのかもしれません。

参考文献
文部科学省「教員勤務実態調査(平成28年度)」
文部科学省「学校や教職員の現状について」
文部科学省「部活動指導員の制度化について」
文部科学省「時間外勤務に関する法令上の根拠」
スポーツ庁「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」
日本教職員組合「国際比較で見る教職員の働き方」
Benesse「教員の勤務実態と意識」
妹尾昌俊「なぜ、日本の先生は忙しいのか、学校の長時間労働は改善するのか」
公益財団法人日本中学校体育連盟「平成30年度部活動指導員数」

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