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【職員インタビュー】きっかけは1枚の新聞記事。それから10年後に立つ場所は。

2019.10.28

【職員インタビュー】きっかけは1枚の新聞記事。それから10年後に立つ場所は。

「強みというのはすべての人にあるものだと考えていて。何かが足りないという視点で人を評価しないことを大切にしています。」

まっすぐ前を見据えて笑う姿がまぶしかった。同じく子どもに関わる者として、同様の視点を持てているだろうか。思わず自問自答してしまう。
中城隼人。約半年前に入職し、Learning for All(以下LFA)の居場所支援事業部に籍を置く職員の1人だ。

LFAでは大きく2つの事業を扱っている。ひとつは創設時から続けている学習支援事業。そしてもうひとつが居場所支援事業。学習支援事業が5年以上の歴史を持つのに対し、居場所支援事業は2016年10月開始と比較的新しい。居場所支援の拠点で多くの小学生と過ごしながら、ともに働く大学生ボランティアを束ねる彼に話を聞いた。

LFAに入職したのは今年の4月。それまでも「子どもの貧困」「子どもの居場所づくり」といった社会課題には強い関心があり、いくつかのNPOに参加しながら解決を目指してきた。

「10年くらい前の話なんですが、高校生の時に通っていた塾の先生に、ある日唐突に新聞を見せられたんです。『これからはこの問題が大変なことになる。』って。その問題というのがまさに子どもの貧困でした。自分が普通に暮らしている中に、生活すらままならない大変な状況の子どもがたくさんいる。ものすごい衝撃で、とにかく驚くと同時に悲しかったですね。僕自身、小学生の頃に体が弱かった時期があって、当たり前のことができないことに違和感を覚えた経験があります。もしかしたらそれが困難を抱える子への共感につながっているのかもしれない。」

原体験があるわけではない。それでも、学生時代から一貫して、子どもの学習支援や居場所支援に関わってきた。子どもと近い距離で何かしたいという思いから、大学は教育学部へ進学。在学中も複数のNPOと関わりを持ち、LFAの前身の団体に所属していたこともある。進学した大学院では文化人類学を専攻し、NPOで活動する学生の動機について民族史の観点から研究した。

「気づけば子ども支援とかNPO支援とかそんなことばっかりやっている。僕自身に強烈な原体験があるわけではないのですが、興味関心の結果、続けてきたこととしては一貫していますね。」

地元の長野市でNPOの中間支援を行っていた前職を離れ、LFAを転職先に選んだのには理由があった。

「もともとプロフェッショナルがたくさんいる組織という認識はありました。それに加え、自分が直接的に関わっていない人も含め、より幅広い人たちの支援ができると感じたためです。前職の現場を運営していて、支援をより広く届けることの必要性を痛感しました。LFAの居場所支援は目の前の子どもだけでは終わらない。困難を抱える子どもたちやその保護者、彼らに対する成果を出すことでさらなる子どもたちにアプローチできる。僕にとってそれはとても魅力的でした。」

現在の勤務地は埼玉県戸田市。ここに位置するLFAの拠点、通称「子どもの家」には、現在11人の小学校低学年の子どもが通っている。

「平日は毎日、ボランティアの大学生と一緒に学校から帰ってきた子どもたちを迎えています。それから近所の公園で遊んだり、一緒に宿題をやったり。夕方になると一緒に食事をし、お迎えまでの間、また一緒に時間を過ごします。」

イメージとしては学童と子ども食堂を兼ね備えた施設だろうか。しかし、単に子どもを預かり食事を提供するだけではないのがLFAの居場所支援の特徴である。

「通っている子一人ひとりに対して、子ども本人と保護者の両者が納得出来るゴールを示すことに努めています。特に子どもに対してはわくわくするゴールを決められるように。そしてそのゴール達成のために綿密な作戦会議を行っています。拠点に通っているのは、生活保護や就学支援を受けていたりと、困難を抱える環境にいる子たちです。子どもの家庭の状況をこまめに共有し、良いことをしたら褒めて悪いことをしたら叱る。これらのことはもちろん、職員やボランティアの学生が介入するタイミングもその子一人ひとりを見て決めています。」

影響を受けるのは子どもだけではない。3ヶ月周期で行っているプログラムには、継続して参加してくれる大学生も多い。子どもへの思いが強く、「何かしたい」と考え協力してくれる彼らは頼もしい存在だ。

今月で子どもの家は開設から丸3年を迎える。今までの成果として、どのようなものが挙げられるのだろうか。

「大きな成果としては2つあると考えています。ひとつはここでの経験が子どもの自信につながっていることです。なかなかできなかった逆上がりができるようになった子がいたり、自分の思いを話せずにいた子が他者に伝えられるようになったり。基本的には子どもに任せて、必要だと判断した場面にだけ大人が介入するスタイルを取っているのですが、ここでの経験を自信に変えた子は多くいます。」

「もうひとつは拠点が子どもたちにとって本音が話せる場所になっていることです。たまたまある子どもと2人きりになる場面があったのですが、その際に彼がポツポツと家庭の事情を話してくれたんです。突然だったので驚いたのですが、彼の方からその話が出たことが嬉しくて。自分たちの拠点が重要な役割を担っていることを感じました。」

子どもの家には子どもたち自らやりたいことを話し合う場もあるそうだ。その際は話し合いの進行も子どもたち自身が担うことになっている。それぞれの得意なことが活かせるこの場は、自己肯定感が高まる場となっていることは想像に難くない。

「成果も認められますが、まだまだ課題もあるのが現状です。ひとつは、地域の方への知名度が低いこと。ふたつめは通っている子どもたちの保護者の方と話をすると、生活に追われるだけでなく、子育てについてそれぞれ悩みを抱えていることが多い。それを「大変そう」と感じることがすごく多いんです。そんな保護者の方にとって、もっともっと気軽に子どものことを相談できる場にしたい。子どもが本音を話せる場にはなりつつあるので、それを保護者の方にまで広げられればと考えています。」

家庭でも学校でもない、このような「第三の場」の存在意義は、子どもにとっても保護者にとっても大きな意義を持つだろう。成果を踏まえた上で、今後達成したいことも聞いてみた。

「子どもの家で学習支援を展開することです。『子どもたちの居場所になる』という役割は果たせているので、次は学力の向上への結果を出したい。僕が現在所属しているのは居場所支援事業部ですが、実は3か月ほど学習支援事業部に所属していた時期があるんです。これはまさに居場所拠点に学習支援拠点のノウハウを取り入れるためでした。子どもの家で本格的に学習支援を始めるにはまだまだ決めなくてはいけないことがたくさんある。子どもたちの学力向上のために何をすればいいのか、明確にしていきたいと思います。」

「僕個人としては、子どもが自己肯定感を持てるような関わりを今後も目指して、続けていきたいと思います。関わった子どもたちが元気に生きていてくれること、普通に家にいて食事ができること、これらのことに感謝ができるように。拠点に通う子の保護者の方で、優しさ、強さみたいなものをすごく感じる方がいて、『何かが足りないという視点で人を評価しないようにしている』とおっしゃっていたんですよ。その話を聞いて以降、僕もその視点は大切にしています。また、子どもが自己肯定感を得るには小さな成功を積み重ねることが大事だと思っています。なので、その小さな成功体験を引き出せるためのスキルを身につけていきたいですね。」

子ども支援、NPOにこれだけ多く関わってきた人である。「今までに子どもに関わってきた中で一番衝撃を受けた出来事は何ですか。」インタビュー終盤、興味本位もあり、そう聞いてみた。

「学生時代、石巻で学習支援をしていたときのことです。東日本大震災時、僕は大学生で、仙台で被災しています。その後、石巻で学習支援に関わっていたのですが、そこで見た子どもたちの姿は本当に衝撃でした。震災で家庭環境が激変したりと、彼らを取り巻く状況は客観的に見たら絶望的だったと思うんですよ。それでも残された家族に迷惑をかけないように、公立の高校を目指している中学3年生がいました。大人でも絶望するような厳しい環境で、前を向いてがんばっている子がいることは大きな衝撃でしたね。」

高校時代の1枚の新聞記事から始まり、10年以上を経た今、彼がたどり着いたのは子どもと笑顔で過ごす放課後だった。「こんな生い立ちだからあの人はこうだ」「あの人に大きな影響を与えたのはあの経験だ」こんなふうに、私たちは人に物語を求めがちだ。特定のフィールドにおいて、強い原体験を持っている人が特別視されがちなのもそのためだろう。ともすれば、原体験がないことにコンプレックスを抱きがちな人もいる。それでも、何かひとつをきっかけにまっすぐに進み続けることはとても素敵なことではないだろうか。帰りの電車の中、ICレコーダーに録音した彼の声を聞きながら、そう思った。


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