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【卒業生インタビュー】目の前の子どもの困難に真摯に向き合うこと、それはその奥に潜む社会課題の入り口に立つことでもある

2020.4.6

 こんにちは。今日の卒業生インタビューは、東京大学4年生の湯川陸(ゆかわりく)さんです。
 湯川さんは、2018年度冬期学習支援拠点でボランティア教師として参加しました。新しく開設したつくば拠点で現場管理スタッフをやるなど、さまざまな子どもたちと出会い、向き合ってきた湯川さんだからこそ語れるお話をご覧ください。

LFAに参加した理由を教えてください

 大学柄、もともと公務員の仕事に興味がありました。ただ自分は現場から遠い印象の官僚ではなく、現場との距離が近い地方公務員の仕事に魅力を感じ、全国の自治体の話を聞きに行ったりしていました。

 3年生のときにその一環で地方自治について学ぶ法学部のゼミに参加し、東京近郊の市役所にインターンで入ったのですが、その年のテーマがたまたま「子育て・教育」でした。市内に点在する子育て施設に赴き、「待機児童」の保護者のお話を訪ねてまわったり、虐待現場の写真を拝見したりしました。要保護児童についての会議を傍聴し、思わず耳を疑いたくなるような厳しい環境に置かれた子ども達の事例が淡々と読み上げられ、政策が決定されていく場に居合わせたりしました。

 そうした現場での学びの結果わかったのは、都市で子どもが育つ環境がいかに過酷か、ということでした。そしてその現状の背景には男女の不平等や東京の一極集中など複雑な要因が絡み合っていることもまた座学で学び、どうにも歯がゆい思いもしていました。そんな折同じゼミで輪読した子どもの貧困をめぐる新書で、「複雑な現状に立ちすくむことなく、1mmでも物事を進めることが大事」の言葉を目にし、自分にとっての1mmとは何だろう、1mmぐらいなら何かできるかもしれない、と考えるようになりました。

 ちょうどそのタイミングでLFAの広告と出会い、これまでずっと取り組んできた勉強であれば、学習支援という形で何か貢献できるかもしれない、と考え、参加を決めました。

LFAの魅力を教えてください

 子どもから学ぶ、という姿勢です。子どもへの支援というと、「何でも持っている」大人の側から「課題」を抱えた子どもへの一方通行が連想されがちです。しかしLFAではそうではなく、教師の感情や価値観は一旦脇におかれ、全てが子ども起点でスタートします。

 その子がどういう大人になりたいのか、どこで勉強につまづいているのか、あるいはそもそも勉強することがその子にとって最適なのか、まで、教師が機械的にカリキュラムをこなしていくのではなく、全ての子どもの言動から判断します。教師目線に陥ってしまいがちな「…してあげたい」という気持ちを自ら認知しつつも押し付けることはしない、まずは子どもがどうありたいか、という姿勢がとても魅力だと思います。

 さらに僕たちは子どもという存在を通じて、遠いところにあったはずの社会課題を手にとるように学ぶことができます。社会的な課題、と聞いてもよくわからないし、自分には関係ない、と看過してしまいがちですが、目の前の子どもの困難に真摯に向き合うこと、それはその奥に潜む社会課題の入り口に立つことでもあります。自分の場合はそれは「外国にルーツがある子どもの大学進学」であり、「地方での子どもの育ちや学び」でした。目の前の子どもと、遠かったはずの社会課題を同じスコープの中で捉えることで、社会課題な課題への当事者意識を否応なく持つことができました。机の上でペンを動かしているだけでは見えない、現場で奔走するからこそ生まれる意識だと思います。

LFAで活動する中で、一番印象に残っている出来事を教えてください

 半年間見ていた、東南アジアにルーツのある高校生が印象に残っています。

 彼は日本で生まれたわけではありませんでしたが、日本語に不自由はなく、よく勉強ができ、本人もそれを自覚していました。LFAの教室では最初と最後の授業でアンケートを実施し、学習習慣や生活状況、子どもの自己認識について把握する時間があります。かなり分量があるアンケートですが、最初の授業のとき彼は一問一問丁寧に解答してくれました。「自分にはいいところがあると思いますか」の問いかけだけは飛ばされ、何の鉛筆のあともありませんでした。

 これは彼からのSOSなのかもしれない。そう考えた私や拠点のメンバーは、勉強をただ教えるのはもちろんのこと、彼のいいところを客観的に見つけ、言葉で伝え続けようと考えました。それはすぐに見つかりました。シャーペンの芯を折って(彼は筆圧が強くて毎授業芯を折る)「うわ、そっち飛んだよね?」と聞いてくれたとき、対面の狭いテーブルで足がぶつかって「俺先生のこと蹴っちゃったよ、ごめん」と謝ってくれたとき、その度ごとに私は感謝の言葉を述べた上で、「自分のことだけではなくて周りの人も気遣えるなんてすごいよ、本当に素敵だね」と声をかけ続けました。それまでは「あいつはギャルでバカでうるさくてケバケバしくて嫌だ」とさんざん愚痴っていた子に、今日は得意な英語を教えてあげたと報告してくれたときは、「でもなんかしてあげたいと思うじゃん」と話してくれるようになりました。私は感動して、「めちゃくちゃいいやん、どんどん続けていこう」とただただ繰り返しました。

 最後の授業でまたアンケートを記入してもらう日、彼は「自分にはいいところがあると思いますか」の問いで手を止め、「自分には1つだけいいところがあると思うんだけど、それしかないのに『当てはまる』にしていいのかな」と私に尋ねました。「どこなん」と尋ね返すと、彼は「自分は人に優しいところがあると思う。それは間違いないんだよね」と私の目を見てはっきりと言いました。

 彼の優しさは私たちが産み出したものでも何でもなく、彼自身にあったものです。ですが、彼がそれを認識し、言葉にしてくれたことをとても嬉しく思いました。私はその瞬間を鮮明に覚えているし、これからも忘れることはありません。

LFAの卒業生として、今後どうありたいですか?

 常に「現場」の目線で物事を考え、地に足のついた議論をできる人でありたいです。

 私は、子どもたちが日本のどこで生まれようと学びや育ちが保障される社会を作る、というビジョンに共感し、LFAが昨年度茨城県に開設したつくば拠点で活動を続けてきました。それとは別に私には、「地方」と「東京」の分断をなくしたい、という大きな夢があります。活動を続けた背景には、そのために教育が果たす役割を探る、という意味もありました。

 しかしそうした大きな理想を語れば語るほど、現場の実情から離れたまま自分のしたいことがただ一人歩きし、実際に生きる人たちの目線がしばしば見過ごされがちだと感じます。私は「地方が〜」「社会が〜」「日本人は〜」という大きな言葉で語りを始める前に、目の前にいるひとりひとりが何を必要とし、その人から見て何が壁になっているのか、それを除くために自分は何ができるのか、という視点を忘れずに持ち、自らの姿勢を常に問い続けたいです「すべての答えは現場にある」。ある町の職員が私に仰ったことを、私はLFAでの活動を通じて身をもって学びました。その姿勢をこれからも忘れずにいたいです。

最後に、参加を迷っている学生に一言お願いします!

 「子どもの貧困」や「NPO」の言葉を耳にすると、意識の高い人たちが意識の高いことをやっている、という印象をどうしても持ってしまうかもしれません。しかしこの団体では、目の前のひとりの子どもの声に耳を傾け、真剣に向き合うことがまずスタートです。研修やサポートも充実していますので、ぜひ仲間になってもらいたいなと思います。

 

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