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【学生スタッフインタビュー】自分の経験や境遇を「強み」として受けいれられる人を増やしたい

2019.3.7

こんにちは!経営企画チームインターンの佐々木です。

今回の学生インタビューは、2018年度夏期学習支援プログラムにボランティア教師として参加し、現在は葛飾区内の教室で運営スタッフを務めている、一橋大学4年の宮木 亮(みやき りょう)さんに話を聞きました。

LFAに参加した理由を教えてください

 格差を肌で感じる経験をしてきたこと、そしてその解決に少しでも貢献したいと思ったことが理由です。

 私の家は埼玉の零細農家で、所得も高くありません。また、生まれ育った地域も比較的所得が低い家庭が多く、教育への関心も低く、地元の中学校は典型的な「荒れている」学校でした。一方で学力の高い高校に進学すると、同級生の多くは医師や弁護士、有名企業の社員など、社会的ステータスの高い職業に就く両親を持ち、家族での海外旅行、私立受験の経験、複数の習い事などは当たり前でした。驚くことに、奨学金の申請をするのはクラスで私一人だけでした。そして、大学に進学するとこのような傾向はさらに強まりました。この経験から私は、家庭の所得と学力には相関関係があること、そして所得の差は学習にとどまらない経験の差を生むことを実感するとともに、所得の低い農家に生まれたことを恥じ、自分に自信が持てなくなっていきました。

 そんな中、大学3年生の冬に「学生のうちに教育格差に関わる活動に参加しよう」と決意することになります。きっかけは、当時参加していた経済哲学のゼミで4年生の先輩が子どもの貧困をテーマにした卒業論文を書くことになったことです。ゼミでの先輩の発表を聞く中で、私が今まで経験してきたことが次々に思い出され、止めどなく先輩の卒論に意見をぶつけ、自分の経験についても勇気を出して語りました。

 このゼミでの出来事をきっかけに改めて教育格差について調べ、考えるようになりました。しかし同時に、今の自分は考えているだけでその解決に対して何の貢献もしていないという虚しさを感じ、「机上の空論で終わりたくない」と思うようになりました。そして教育格差の問題に取り組む団体を探し、その中から特に理念に共感したLFAの学習支援プログラムに、部活のオフを利用して4年生の夏から参加しました。

研修中、ボランティア教師にアドバイスする様子

LFAで活動する中で、一番印象に残っている出来事を教えてください

 初めて参加した夏期プログラムで担当した生徒のことが、一番印象に残っています。

 私が担当したのは数年前に来日した外国籍の中学3年生で、入試制度上、母国語ではない日本語で一般の高校受験を受けなければなりませんでした。彼は社会から突き付けられた高いハードルを越えるために、言い訳もせず、寝る間も惜しんで勉強していました。しかし、彼の努力をもってしても出来ないことはあり、そのような壁に直面した時に彼は、「出来ないのは自分のせいなんだ」「俺頭悪いから」と自分を責めるばかりでした。このような目の前の一人の子どもの困難に自分自身が直面して初めて日本社会の不合理を実感し、その時自分の中に怒りがふつふつと湧き上がりました。

 社会制度を変える力は私にはありませんが、夏期プログラムの5日間彼に向き合い、「学力を少しでも上げたい」、「自分の過去に自信を持って欲しい」という気持ちを込めて指導しました。それは、学力や自己肯定感の向上が、彼の人生を変えていくと確信していたからです。

 5日間という短い期間でしたが、テストの点数が上がりそれを彼が喜んでくれたこと、彼の経験がいかに素晴らしいのかと伝える中で、彼の方から自分の過去について話してくれたことは本当に嬉しかったです。

 海外から移住してきた家庭の子どもに対する配慮の少ない教育制度、他文化への無理解といった問題は、彼に出会わなければ知ることのなかった日本社会の側面で、このような社会課題に対し一人の子どもを通して向き合う経験はとても貴重なものだったと思います。

LFAに参加する前と今で一番変わったのはどのようなところですか?

 一緒に活動する仲間からの指摘で、自分に対して肯定的な気持ちを持てるようになったことに気づきました。

 LFAに参加する前の自分は、自分の過去に負い目を感じ、自信が持てず、自分のことを周りに話すことに抵抗がありました。しかしLFAでは、相手の持っている価値観を否定せず、その価値観の根底にある出来事や感情を仲間とともに考えます。また、仲間を信頼・尊敬し、共に学ぶ文化があります。私の過去や、過去の体験に基づく価値観を受け止め、肯定してくれる人がいることが自分の心の大きな支えとなり、自己開示ができるようになっていきました。そしてそれ以上に、相手から自己開示される機会も多くなりました。

 LFAでは「子どもに学力の向上を届けるためには、教師も成長する必要がある」と考えがあり、教師を想っているからこそ、プログラムを通じて「自分が変わった」という実感を持つことが出来たのだと思います。

夏期プログラムで活動した拠点の仲間と
宮木さんは後列中央

LFAで達成したいことは何ですか?

 冬期プログラムで私が達成したいのは、子どもたちはもちろん、プログラムに参加する教師の自己肯定感を育むことです。

 私は夏期プログラムで一緒に活動したチームのメンバーに自分の経験を話し、認めてもらえたことで、「自分の経験は武器にもなるんだ」と思えるようになりました。LFAの教室に来る子どもたちにとっても、自らの境遇を恥じたり、勉強ができなかったりすることが原因で自信を失うことは幸せではないと思います。というのも、人が人生の中で一番長く接するのは、友達や家族でもなく、「自分の内面」であり、「自分の内面」を好きになれない状態では一生苦しむことになるからです。だから、学習支援を通して「学力の向上」に基づく自信と、自己肯定感を持ってほしいです。

 さらに私は、このように子どもたちに自己肯定感を持ってもらうためには、指導する学生自身が、「人生を幸福にするために、いかに自己肯定感が重要か」について知ることが必要だと考えています。LFAでは指導準備をするときに、その指導の結果として子どもにどうなっていてほしいか、理想の状態を考えます。この理想の状態を考えるときには、学生教師自身の軸や感情が必ず影響し、教師自身が持っていないものは子どもに伝えることができないと思っています。だから、子どもに自己肯定感を持たせようとするとき、教師自身が自己肯定感を育まれる経験をする必要があるのです。今期、私は教室運営スタッフとして活動する中で、子どもに最良の結果を届けるために、まず教師が自己肯定感を持ち、最大限の力が発揮できるようなサポートをしていきたいです。

 また、私は上記の経験から、「自分の人生に自信を持てない人を減らしていきたい」と思っています。3月で卒業し4月からは社会人となりますが、LFAでの経験を活かして、その人の一生の記憶に残るような、人生を肯定する言葉をかけられる人になりたいです。

最後に、参加を迷っている学生に一言お願いします!

 LFAの学習支援プログラムでは、ただ子どもの学力をあげるのではなく、子どもの10年、20年先の姿を考えることを大切にしていますが、子どもの人生に深く寄り添い考えるためには、教師自身も自分の人生について深く考えている必要があります。そのためLFAでは、教師に対して「LFAで何をしたいか」「将来何をしたいか」といった問いが投げかけられ、自分で考え、仲間と共有し、仲間から意見をもらう時間があります。私の場合、この体験が、マインドが大きく変わるきっかけとなりました。これはLFAに参加していなければ起こらなかった変化だと思います。

 また、かつて私がそうであったように、LFAが支援している子どもたちは今後の人生の中で格差と向き合わねばならないときが来ると思います。その前に、「マイナスに見える経験もプラスに変えることができる」という考えを持った大人と接することができれば、自分を否定するような思いをしなくて済むのではないでしょうか。

 人生について真剣に考えたい、自分を変えたいと思っている学生の皆さん、そして、格差を経験した当事者の学生の皆さん。LFAにはみなさんにとって人生を変えるたくさんの機会があります。まずは是非説明会へお越しください!


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