【学生スタッフインタビュー】「僕らは補助輪。胸を張るのは子どもたち。」

インタビュー・コラム
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皆さんこんばんは。学生採用インターンのみゆです。

今回は現在もLFAに関わっている現役スタッフである田中道顕さんにインタビューのご協力をいただきました。

ある外国籍の男の子に出会った田中さんがどのような課題を目にし、どのようなことを感じてきたのか。

具体的なエピソードを通じて、子どもを取り巻く問題についてもっと考えを深めるきっかけになるのではないかと思います。

ーLFAに参加した理由を教えてください。

この夏で5期目となるインターンをしている僕ですが、LFAに参加したのはふとしたきっかけです。

もともと少し教育に対して興味があったのですが、ゼミの先輩からお誘いを受けたのがLFAに参加することになった直接的なきっかけです。その後LFAのHPをみて「7人に1人の子ども」が「相対的貧困」であることに違和感を感じ、また社会課題の解決には多方面からのアプローチが必要であるという社会課題に対する視座に共感を感じ、LFAの春プログラムにエントリーすることを決めました。

 

ーそんなふとしたきっかけで活動に携わり始めた田中さんですが、結果として長くLFAに関わってくださっていますよね。この活動を続けている理由はなぜですか?

僕が今でも、そして来期以降もLFAで活動を続けるのにはいくつか理由があります。
子どもたちの頑張りを誰よりも側で見てきて誰よりも知っているから、子どもたちの素敵な笑顔を知っているから、子どもたちの苦悩を知っているから、そして子どもたちの明るい未来を心から信じ彼ら / 彼女らに伴走したいと思うからです。

 

ーLFAで出会った子どもとのエピソードについて教えてください。

どの子との経験も思い出深いのですが、ここではこの春から直接関わり始めるようになった中学2年生の子どもとのエピソードを紹介します。

その子は中学2年生の外国籍の男の子です。肌は黒く、イスラーム教徒で、来日して2年強になります。普段はお茶目でいたずらっ子な彼ですが、努力家で、寺子屋(LFAの学習支援拠点)にはいつも時間通りに来て勉強に励んでいます。また、学校から出された課題・宿題には日本語の意味がわからないところを寺子屋教師に質問しながら時間がかかってもじっくり取り組んでいます。

非漢字圏出身の彼には馴染みのなかった漢字も必死に勉強し、今では小学校高学年の漢字を勉強しています。日本に来てわずか2年で、平仮名と片仮名と小学校中学年以下の漢字を修得できているのには、「若いから言語習得が早い」の一言では決して片付けられない彼の血の滲むような努力があります。

ただ、言語的な課題について言えば、いわゆる「やさしい日本語」を使えば彼とのコミュニケーションは問題ありませんが、聴解・読解・作文のどれをとっても学校で飛び交う日本語を理解するレベルには達していません。

 

ー「言語的な課題」という点について、なにか具体的なエピソードはありますか?

この度の新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、臨時休校措置がとられました。
彼は、緊急事態宣言の延長に伴う、臨時休校期間の延長について、僕が授業で確認するまで一切知りませんでした。

学校から文書も配布され、学校のHPにも同じ文書が掲載されているのですが、彼の家庭に配布文書の日本語を読解できる人はいませんし、学校のHPへのアクセスの仕方を知る人もいません。

学校から出された山積みの課題には、まだ彼には読めない日本語が連なっています。

このように見てくると、言語的課題への対応の必要性(日本語支援の必要性)が高いことがわかると思います。

しかしながら、彼をはじめとする外国籍の子どもたちは、言語の問題に限定されない問題を抱えています。

臨時休校中の課題に日本語サポートを付した田中さんの自作教材

「言語の問題に限定されない問題」についても、もう少し詳しくお聞きしたいです。

例えば、彼は肌の色の違いや日本の学校文化に対する不適応行動を理由に学校でいじめを受けていたことがあります。

また、母子世帯・生活保護受給世帯でもある彼の家庭は、母親が夜遅くまで働いているため、学校から帰った後や土日は姉と2人で過ごす時間がほとんどです。緊急事態宣言下の状況でオンライン指導をしていた際に「お母さんと過ごす時間が増えて嬉しい」と笑顔で話してくれた時、僕には彼が普段心の片隅にしまっている「寂しさ」を垣間見た気がします。

彼を取り巻く現状は「子どもの貧困の問題」と「外国籍 / 外国にルーツのある子どもたちの抱える問題」が複雑に錯綜する状況です。それぞれに固有の問題も多々ありますが、一般化して「子どもの貧困」と「外国籍 / 外国にルーツがあること」について考えてみても、相互に関連性が強いことが言えるかと思います。

子どもが田中さんに宛てて書いてくれたハガキの裏面

学校でも居場所を欠き、家庭でも寂しさを覚えるような孤立化された彼らの状況は、言語の問題としては語りつくせない生存に関わる問題だと思っています。

 

ーありがとうございました。最後に、参加を迷っている学生に一言お願いします!

「僕らは補助輪。胸を張るのは子どもたち。」
子どもたちの可能性を引き出し、子どもたちに笑顔と結果を届ける「補助輪」に一緒になりませんか。
エントリー時には指導スキルも学術的なバックグラウンドも問いません。実際の指導や指導に向けた準備については、僕たちスタッフが全力でサポートします。
子どもに対する素敵な想いを持っている学生のみなさん、「子どもの貧困」という社会課題に対して興味がある学生のみなさん、下半期何か打ち込めるものがほしいと思っている学生のみなさん、ぜひLFAの門を叩いてみてください。