【学生スタッフインタビュー】社会課題の当事者として行動する仲間を増やしたい

インタビュー・コラム
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 Learning for Al(以下LFA)学生スタッフインタビュー、今回は東京大学4年の小瀬絢子(こせ あやこ)さんにお話を聞きました。小瀬さんは、2017年1月より学生教師としてLFAの学習支援プログラムに参加し、現在は学生インターンとして教室運営に携わっています。
 目の前の子どもたちに一生ものの成功体験を届けると同時に、社会課題の当事者として行動する仲間を増やしたいと語る小瀬さんの声をぜひご覧ください!

LFAに参加した理由を教えてください

 どのような子どもが、なぜ困っていて、何を必要としているのか、自分の目で確かめたい、それを知った上で日本の社会課題について議論できる人になりたい、より良い日本の教育を考えられる人になりたいと思ったのがLFAに参加した理由です。

 というのも、大学に入学した頃は教員を目指していました。教職の授業で「子どもの貧困」について学ぶ機会はありましたが、私自身の経験としてそれを実感したことはありませんでしたし、授業自体もデータに基づく机上のものだったので、当事者の実態をつかめずにいました。

 私は実態をわからないまま、子どもの貧困の課題についてどこか無責任に議論を進めてしまうことに違和感を感じました。また、困難を抱える子どもたちの実情を知らない人たちが、その状態のまま社会の仕組みを作っていくことに対する不信感や、自分が教員になった時に、忙しさに忙殺されて子どもの課題を見過ごさないだろうかという不安を抱いたことがLFAに参加したきっかけです。

LFAに参加する前と今で一番変わったのはどのようなところですか?

 単に学習支援で学習の機会を提供するだけでは、教育格差は解消できない。子どもの主体的な姿勢を伸ばしたり、ありのままを受け入れる環境があってはじめて、教育格差の解決に繋がるのだと思えるようになったことが、一番変わったところだと思います。

 LFAに参加する前、2年半小学校で学習支援のボランティアをしていました。そこに通う男の子は学校に来てから、5時間目まで一度も自分の椅子には座らず、教室で授業を受けることができていませんでした。私は、彼が学校で学ぶ権利が保証されていないことに問題意識を持ち、どうにかして彼に「学力向上」という結果を届けたいという一心で、指導方法を考えては、失敗を繰り返していました。

 その中で、彼が一度だけ、テストを解こうという主体性を見せてくれたことがありました。しかし、テストを受ける中でわからない問題について質問してくる彼に対して、私は自分で考えて答えを導き出してほしいという思いから、一切答えを教えませんでした。すると、彼は問題を解けない自分に絶望し、テストをビリビリに破いてしまい、それ以来、一切テストに向き合う姿勢を見せなくなってしまいました。

 あの時私が担当した3年生の男の子は、学校が安心できる空間ではない中で、そもそも勉強できる状態ではありませんでした。自分は学力の向上にばかり取り組み、彼の主体的な気持ちを大切にすることから目を背けていました。自分の無力さを感じ、今もあの時の彼に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

 現在、LFAで教室運営責任者として活動をしている拠点は、学習支援を行いながら、ありのままの自分でいられるような空間づくりに取り組んでいます。来てくれている子どもの中には、発達障害を抱え、学校の授業を理解することもできず、不登校になってしまった子がいます。今まで勉強に対して拒否感を持っている子どもに対しては、初めはカードゲームをしたり、音楽を聞いたり、子どもが安心できる空間づくりをすることから始めています。すると次第に、子ども自身が「漢字が書けるようになりたい」などの発言をしてくれるようになります。そのような様子を見ると、土台の安心空間があり、ここなら受け入れてくれると感じられれば、子どもたちは自分から勉強をしたり、新しいことに挑戦したりできるのだと実感しています。

 勉強ができないのは、その子が努力しなかったからでも、周りが勉強を教えなかったからでもなく、そもそもその子とその子を取り巻く大人との間に土台の安心空間がなく、勉強などできるような状態ではなかったことに気付かされました。

研修時の様子

 

LFAで活動する中で、一番印象に残っている出来事を教えてください

  初めはアルファベットを書くこともできず、できないことがあるとしょげて姿勢が悪くなってしまう男の子がいました。当時その教室では、帰りの挨拶の時間に、子どもたち自身で今日の授業でできるようになったことを発表する時間を毎回取っていました。はじめ、彼は友達の発表を聞いても「あいつ、嘘だ。」とマイナスな発言をし、友達の頑張りを認めることができませんでした。

 そんな中でも、寺子屋の教師が、彼の学習のスピードに合わせた授業を行ったり、周りの子どもと比べるのではなく、自身がどれだけ頑張れたのかを彼自身が認識できるような声かけを行うことで、彼は少しずつでも着実にできることを増やしていきました。教師の一つひとつの行動が、彼の自信に、そして主体性に繋がりました。

 すると彼は、わからない問題があっても自分で過去の教材を見返したり、覚えられなかった単語は休み時間に練習したり、頼もしい姿を見せてくれるようになりました。その中で、私が特に嬉しかった出来事は、帰りの会での「その日できるようになったことの発表」に自ら手を挙げ、同じクラスの子が頑張って満点を取っていたことまで伝えてくれたことです。学力の向上による自信と自分を無条件に受け入れてくれる他者の存在が、彼の他者への思いやりと他者を認める力にまで変化をもたらしたことを、本当に嬉しく思いました。

 私たちは、週に1回、学習支援という方法でしか関わることができないけれど、それでも私たちができることに責任と誇りを持って活動を続けていこうと改めて強く思いました。

研修中の様子

 

LFAで達成したいことは何ですか?

 大きく2つあります。

 1つ目は、子どもたちが寺子屋を卒業した後に、自分で自分の人生を切り開いていける力を届けたいということです。LFAの教室に通った子どもたちが、この先の人生で貧困に起因する困難に直面する可能性は少なからずあると思います。そんな時に、自分はもうダメだと諦めてしまうのではなく、「寺子屋の先生がいつも応援してくれて、毎週努力し続けたことであんなことができるようになったな。だから自分ならできる」と思ってくれるような、一生ものの成功体験を届けたいと思います。

 2つ目は、ひとりでも多くの人に困難を抱えている子どもの存在を知ってもらい、社会課題の当事者として行動できる人になってもらうということです。LFAだけでは、相対的貧困状態にある155万人の子どもたち全員に支援を届けることは難しいですただ、私が持つ一つの強みとして自分の周りに、社会のためにアクションをしたいと志す人がたくさんいるということがあります。私は、学生時代のうちにひとりでも多くの人に、自分が届けられる子どもの声を発信し、その子の力になりたいと思ってもらえるように活動を続けていきたいと考えています。

最後に、参加を迷っている学生に一言お願いします!

 大学の授業や本からは聞こえてこない、ひとりの子どもの声と向き合い、その子の人生に寄り添い、子どもと共に成長するのは、学生の今しかできない経験なのではないでしょうか。この夏、子どもたちと向き合い、自分にしか届けられない子どもの変容を届けてみませんか?一緒に活動をしてくれる仲間になってくれるのを待っています!


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まずは以下の画像から、子どもの貧困やLFAの事業内容・プログラムについて説明した動画をご覧ください。


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