【学生スタッフインタビュー】社会から置き去りにされている子どもをなくすために

インタビュー・コラム
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 こんばんは!今回の学生インタビューは、2018年度夏期学習支援プログラムにボランティア教師として参加し、現在は葛飾区内の教室で運営責任者を務めている、東京大学2年の小池 広人(こいけ ひろと)さんに話を聞きました。

・LFAに参加した理由を教えてください

私は高1のときに、社会課題、特に貧困に興味を持ち出しました。学校のプログラムとしてフィリピンへ研修旅行に行ったことがきっかけです。フィリピンでは貸し切りのバスで移動をしたのですが、同級生がお菓子を食べながら楽しく騒いでいる私たちのバスが、飢餓のように見える2、3歳ほどの子どもが歩道に座り込んでいる前を通過していきました。この異様な光景を目にしたときに「2つの世界が回っているんだ」という感覚を抱いた僕は、社会課題、特に世界の貧困に興味を持ち始めました。

そして、貧困について調べているうちに、国内にも貧困が存在することを高3のときに知りました。経済的に困窮しており、支援が必要な人が7人に1人も存在しているにも関わらず、支援を受けることができている人はそのうちの20%以下であることを知りました。世界の絶対的貧困は注目を浴びやすいのに対して、国内の相対的貧困に日本人が焦点を当てないことに危機感を覚えました「日本人が取り組まんで誰が取り組むねん」という思いから、大学生になったら、何かしらの形で国内の貧困の解決に取り組みたいと考えていました。そして、大学に入学してから、子どもの貧困に取り組んでいるLFAの存在を知り、自分にも何かできるかもしれないと思いプログラムに参加しました。

研修中に学生ボランティアと話している様子

・LFAに参加する前と今で一番変わったのはどのようなところですか?

私が一番変わったのは、子どもが抱える困難についての認識ですLFAに参加する前は、「子どもたちは経済面で困っているんだ!だからこそ、経済的な支援や、無償の学習機会の提供が必要なんだ!」と考えていました。しかし、LFAに参加した後である今は、「子どもたちは生まれながらにして、安心できる居場所や人に受け入れられる経験、他人と関係性を築く経験が不足している。子どもたちは生まれながらにして社会から置き去りにされている。子どもたちに必要なものは、単なる経済的な援助や学習機会の提供ではなく、他人と関係性を築く経験、そのうえで自分に自信を持つことができるようになるための支援なんだ!と考えるようになりました。

私が接している子どもには、家庭の養育機能が麻痺しており、家で親と接することができる時間が極端に少ない中で育った中学生の男の子がいます。親が面倒を見れないため、その子は家で歯磨きをすることはありませんまた、その子はいじめが原因で小学生の高学年から不登校です。家でも学校でも人に受容される経験をしたことがないその子は、自己肯定感が極端に低く、「俺なんかが外歩いてら気持ち悪いでしょ?」という発言をし、1人で外を歩くことができない状況にあります。

また、父親のDVが原因で、母親と2人の兄弟と一緒に家を逃げ出してきた小学生の男の子がいます。DVの影響で母親は精神的に不安定になることが多く、子どもたちに過度にあたってしまうこともあります。その子にとって、家は安心できる空間ではありません。その子は生まれながらにして、安心できる家庭、母親に受け入れられていると感じることのできる空間を剥奪されています。このような成育背景をかかえるその子の口からは、「俺なんかどんな家に生まれても不幸、生まれてくること自体が不幸」という言葉が聞かれます。

このような子どもたちは、生まれながらにして、受容されていると感じる空間、無条件に肯定される経験を奪われています。その結果、自分に自信を持つことができなくなっています。

「子どもたちが自分らしさを伸ばせる教育」などという教育観をよく耳にしますが、このような発言をしている大人が語る「子ども」に、彼らは含まれているのだろうか?といつも思います。

「社会をよりよくしよう!」と語る大人の「社会」にその子たちは含まれているのだろうかといつも思います。そのような発言をする大人からは、生まれながらにして困難を抱えこまされる子どもたちのことは見えていないのではないかと思います。他者に受容された経験がなく、自分を認めることができない子どもたちは、「自分らしさを伸ばす」ためのスタートラインにも立てません。この社会には、社会の「ふつう」のラインに立つことができない子どもがいます。そのような子どもたちが社会の「ふつう」のラインに立つために私たちが何をすべきかをまずは考えるべきなのではないかと私は思います。

オフィスで作業している様子


・LFAで活動する中で、一番印象に残っている出来事を教えてください

一番印象に残っている出来事は、夏に担当した中3の男の子の変化を目の当たりにしたことです。
その子は、中3の夏の時点で内申がほとんど1で、学校では問題児のレッテルを張られていました

学力に関しては、中3の夏の時点で中1の英語の内容をまったく理解していませんでした。”have”や”work”などの中1の初めに誰もが絶対に習う単語さえ分からない状況でした。

しかし、教えたことはほとんど完璧に理解できる、理解力の高い子どもでした初めてその子に会い、その子の現状を見たときに、「この子がここからいくら学校の授業を頑張っても、結局基本でつまずくやん!」何でこの状況で放置されてんの!「周りの大人は何してんねん!」と強く思いました。

理解力が高いのに、勉強をすればいくらでも伸びるのに、基本ができていないから足をすくわれてしまう状況でした。そのような状況のせいか、「俺は勉強ができない」という発言をするほど、自分に自信を持てない子どもでした。

そこで、どうすればこの子が自分に自信を持てるようになるのかを考え続けました。考えた結果、指導では各コマの最後に確認テストをするのですが、英語の確認テストにでてくるその子が理解できそうにない単語すべてに日本語訳を書きました。その日に教えたことをすべて理解できていれば満点をとることができるテストをつくりました。そうすることで、その日に教えたことは完璧に理解できるその子はテストで満点をとれるようになりました。初めは満点をとっても嬉しそうでないその子に対して、「今日やったことは完璧にできてるやん!A君は理解力がとても高いから、頑張って勉強すれば英語なんかすぐできるようになるよ!」と声をかけ続けました。すると、テストを解きおわったあとに「まあまあできた」としか初めは言わなかったその子が、「俺天才!」といって解き終わった答案を嬉しそうに私に渡してくれるようになりました。

自分に自信を持つようになったその子は、指導最終日に、「俺が本気でやれば中1の英語は一週間あったら終わる!」「1か月あれば、中2、中3の英語も終わる!」と自分で言い出しました。それを聞いたとき、僕はとても嬉しかったです。大人が真剣に子供に向き合い、子供の可能性を信じてあげれば、子供はいくらでも変わる、子どもは自分に自信を持てるようになると強く感じました。

その後その子は学校の授業を真剣に受けるようになり、内申が20以上 上がりました。それを聞いたとき、私は本当に嬉しかったです。

・冬プログラムから学生スタッフとして活動されているということですが、LFAで達成したいことは何ですか?

私がLFAで達成したいことは2つあります。
1つ目は、目の前の子どもたちに、「この人は自分のことを受け入れてくれているんだ」、「この人は自分のことを真剣に考え続けてくれているんだ」と思える大人との出会いを届けることです。そのうえで、子どもが自分に自信を持ち、勉強に取り組み、学力向上という結果を届けることです。

LFAで接する子どもたちには、「自分が勉強をしたところで意味がない」という発言をする子どもが多いです。自分に自信をもてない、自分には何もできないと考えている子どもが多いです。

子どもたちがそのような状況になっている背景には、受容される経験、無条件に肯定される経験が少ないことがあります。
そのような子どもたちに単に学力を届けたところで、子どもの将来は変わることはないと私は考えています。子どもたちが自立して幸せに生きていくことができるように、子どもには自分を認めることができる力と、自分の可能性を信じる力を届けたいと思っています。そのために、受容される、無条件に肯定される経験と、勉強を通しての成功体験を子どもたちに届けたいです。

2つ目は、家庭が課題を抱え込むことがないように、「地域で家庭をサポートし、地域で子どもを育てる」仕組みをつくることです。

目の前の子どもの支援をするだけでは状況は変わりません。生まれながらにして社会から置き去りにされるリスクのある子どもたちは毎日生まれ続けています。そして、子どもたちが社会から置き去りにされる要因として、家庭が課題を抱え込まなければいけない、子どもを育てる役割の大部分を家庭が負わなければいけない現状があると感じています。

経済的に苦しく両親ともに家で子どもと接することができない世帯、収入を得ることと子どもの養育を1人で背負わなければならない片親世帯、DVから逃げてきた片親世帯、所属するコミュニティーがない外国籍の世帯など、課題を家庭で抱え込まなければならなくなる世帯、子どもが他人との関係性を築くことが困難になるリスクがある世帯が多く存在します。子どもが生まれながらにして社会から置き去りにされてしまうのは、このような家庭が存在するからではなく、このような課題を家庭内で抱え込まなければならないからであると私は感じています。
だからこそ、社会から置き去りにされてしまう子どもをなくすために、「地域で家庭をサポートし、地域で子どもを育てる」仕組みをつくることが不可欠だと考えていますし、そのような仕組みをつくりたいと私は考えています。

以上2点が、私がLFAで達成したいことです。

・最後に、参加を迷っている学生に一言お願いします!

LFAのプログラムでは、生まれた環境によって、困難を抱えこまされている子どもと接することになります

子どもたちと接することで、今まで自分が見ていた社会の狭さを感じさせられる経験、今まで自分が見ていなかった社会の一部を見る経験をすることができると同時に、社会課題とは何か、なぜ社会課題は解決されなければならないのかを身をもって体感することになります。

子どもが教師と接することによって変わっていくのはもちろん、教師も子どもと接することで変わっていくプログラムなので、社会課題について真剣に考えたい、社会課題に実際に触れたいという方はぜひご参加ください!

 

 


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