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【「勉強したくない」という声に耳を傾ける vol.2】〜どうすれば勉強するか〜

2019.9.18

【「勉強したくない」という声に耳を傾ける vol.2】〜どうすれば勉強するか〜

みなさん、こんにちは。Learning for All 職員の福田です。

さて、前回のブログでは「なぜ子どもは勉強をしたくないのか」について考えました。
今回は、「それでは、どうすれば勉強するのか」について、具体的に考えてみたいと思います。

ー まずは子どもの声に耳をかたむける

「勉強すべき」をむやみに子どもに押し付けてはいけません。
子どももそんなことはとうにわかりきっていて、それでもやりたくないのです。そんなことを言われても、関係性が悪くなるだけになってしまいかねません。

目の前の子どもはどういった理由で勉強を避けるのか、できるのであればしっかりと本人から聞き、どうすれば良いのか考えましょう。

先週のブログでも触れたように、勉強したくない理由は様々です。
きちんと様子を見た上で、その子にあったやり方、関係性にあったやり方で勉強を促すのが重要です。

その子一人一人に合ったやり方があることを忘れてはいけません。

ー 学習意欲の理論(ARCS理論)

とはいえ、学習意欲がどう分類されるのか、どう喚起されるのか、一般的な法則を理解しておくことも大事です。
学習意欲に関する理論はいくつかありますが、おそらく最も有名である「ARCS理論」を紹介します。
この理論では、子どもの学習意欲の源泉は4つに分類できるとされています。それはARCSの頭文字をとったA(Attention:注意)、R(Relevance:関連性、重要性)、C(Confidence:自信)、S(Satisfaction:満足感)です。
ARCSモデルを用いた学習意欲の喚起については、愛媛大学教育デザイン室のもとのチェックリストがわかりやすいかもしれません。
Aを除くRCSについては長期的なデザインが関わるので、すぐに効果が出るものではありませんが、こうしたリストを見ながら工夫をこらしてみるのも良いのではないでしょうか。

(出所) 愛媛大学教育デザイン室「教育事例7~番外編~ ARCS動機づけモデルを使って学生の学習意欲を高めよう

いったんこの4つの整理を前提にして、具体的なプロセスを説明しながらどのように勉強を促すとよいのか見ていきます。

ー 負荷が小さいところからスタートする

まず、どんな内容から始めると良いのでしょうか。

先週のブログでも触れましたが、負荷が少ないところからスタートするというのは非常に重要です。
「小さな努力でできる」適切な部分からスタートすれば、それがどんな小さなものであってもその経験がその子の自信(Confidence)につながるきっかけができるからです。

ただ、単に問題が解ければ自信につながるというものでもありません。
「○くんが頑張ったから解けたんだよ!」と、成果の原因を自分の努力に帰属させることが重要です。
また、「先週よりたくさん覚えられているね。」のように、過去の自分からの進歩を示してあげることも重要です。
(「○○ちゃんよりできているね」という他人との比較は好ましくありません。)

ー 報酬によって動機づけをすることのメリットとデメリット

とはいえ、「その小さな成功体験を持ってもらうきっかけも作るのが難しい」のであれば、次点の策として「報酬」を与えることも有効だと思われます。
短期的で外発的ではあれど、最も手軽に意欲を喚起できる手段であるからです。

ただ、報酬は意欲を喚起し続けるためのもののではなく、「小さな自信」を持ってもらうためのきっかけづくりに過ぎないです。

(出所) 市川伸一「動機づけを高めて、時間効率を上げる」

上の図にあるように、報酬によって喚起される意欲は最も外発的なものです。
「報酬がなければ勉強しない」状態に陥らないように、報酬以外の学習動機を早期に強化しなければなりません。

ー 頑張ったプロセスや小さなことでも認め、褒めてあげる。

自信を持ってもらうプロセスの中で、子どもの満足感(Satisfaction)を刺激し続けるのも重要です。
「習ったことが実際にテストなどで使えている」「頑張ったり正解したりしたら褒めてもらえる」といった感覚を持って勉強を進められるようにしましょう。

では、具体的にどのような声かけが良いのでしょうか。

ある研究によれば、「人物評価」「助言」「はげまし」の言葉が生徒のやる気を喚起するようです。
例えば、人物評価とは「国語のセンスがあるね」「よく頑張ってるね」などの肯定的評価、「助言」とは「自分のペースでやれば良いよ」などの言葉がけです。

 (出所) 吉川正剛、三宮真智子「生徒の学習意欲に及ぼす教師の言葉がけの影響」

逆に、どのような言葉がやる気を奪うのでしょうか。

同じ調査では、「予想・判断」「要求・制止」「質問」がやる気を奪うことが示されています。
「予想・判断」とは「頑張ってもここまでだろうね」など、「要求・制止」は「真面目にやりなさい」「勉強しなさい」も含まれます。「質問」は「なんでできないの?」などのできないことを責めるような表現が多かったようです。

 (出所) 吉川正剛、三宮真智子「生徒の学習意欲に及ぼす教師の言葉がけの影響」

特に、「要求・制止」にあたる「勉強しなさい」「真面目にやりなさい」などの言葉がけをついしてしまっていないでしょうか。
こうした言葉がけは子どものやる気を削いでしまうことがわかっています。
善意であっても、子どもに対して勉強を要求するのは逆効果だと知っておくと良いでしょう。

ー 勉強の重要性(Relevance)や面白さを伝える

重要なのはここまでのプロセスを根気よく続けることです。
できることを見つけ、自信を持ってもらい、その自信を糧に勉強をして満足感をえる…これが繰り返されるようになれば、勉強に対する苦手意識はある程度解消されるのではないでしょうか。

ここまで来てようやく、「勉強は大事だよ」「勉強は面白いよ」という言葉に大きな効果が出始めます。
(もちろん、「勉強は大事だよ」とそのまま伝えるのが良いわけではありません。)

(出所) 市川伸一「動機づけを高めて、時間効率を上げる」(再掲)

これらは勉強の内容に関与する動機であることが多く、それゆえに内発的な動機になり得ます。
内発的な動機は、自然と勉強に向かう、もしくは自分で意識して勉強に向かうという習慣の基盤になります。

例えば、希望する進路があるのであれば、高校進学の話をするのでも良いですし、直近のテストの話でも良いかもしれません。
「それに向かって頑張ることが、どう役に立つのか」という実感を持ってもらえるように働きかけましょう。
「勉強は重要だ」という誰しもがぼんやりと持つ感覚を、はっきりと明確な指針に紐づけることが重要です。

もちろん、勉強の内容それ自体を面白いと思えるのが理想的です。先ほどの図でももっとも内発的な動機に分類されていました。
例えば、「数学の方程式を解けるのが面白い」「英語の文法を習って、喋れる内容の幅が広がるのが楽しい」と思うことができたら、それはかなり強い学習の動機になるはずです。

とはいえ、先週も触れたように勉強を「面白い」と思ってもらうのはなかなかハードルが高いです。
しかし、些細なことからその子の興味に引きつけて教えることはできます。
例えば、サッカーが好きな子と一緒に外国人サッカー選手のインタビューを見て英語を勉強したり、買い物を一緒にして足し算の勉強をしたりなど、日常生活と結びつけたり…。

しかし、「それでも英語は難しい…」、「それでも足し算は好きじゃないな…」と思うこともやはり多いです。
無理に面白がらせるものでもなく、重要性を認識してもらうのが現実的なゴールだと思って気長に子どもと向き合うのが重要だと思われます。

ー 最後に

いかがでしたでしょうか。
2週間にわたって、「子どもが勉強したくない理由とその対策」を考えました。

子どもの勉強への意欲を引き出すというプロセスは、何より保護者や教える人間の忍耐強さが求められるものです。
しかし、どの子も「よく生きたい」と願っていて、その実現のために漠然とでも「勉強をできるようになりたい」と思っているものです。

そのことを信じて長い目線で子どもと向き合うのが大切なのではないでしょうか。

もしこの記事をお読みになっている方の中に子どもの勉強について悩みを抱えている方がいて、少しでもそうした方の役に立ったのであれば、幸いです。

参考文献

文部科学省「学習意欲と学習プロセスの関係」
吉川正剛、三宮真智子「生徒の学習意欲に及ぼす教師の言葉がけの影響」
平井智久「自ら学ぶ意欲を育成するための 学習行動に関する調査研究」
愛媛大学教育デザイン室教育事例7~番外編~ ARCS動機づけモデルを使って学生の学習意欲を高めよう
J.M.ケラー「学習意欲をデザインする〜ARCSモデルによるインストラクショナルデザイン〜」
市川伸一「動機づけを高めて、時間効率を上げる」

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