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これまでのLFA・これからのLFA

2018.3.17

こんにちは!
LFA通信です。

今回のLFA通信では、最終回を記念し、代表の李のインタビューを通して、LFAの過去・現在を振り返るとともに、LFAの未来についてみなさんにお伝えしていきます。

代表の李には、全12の質問を通して、これまでのLFAを振り返るとともに今後の展望を語ってもらいました。
LFAはこれまでの活動からどのようなことを学び、どのように活動に活かしてきたのか。
そして、これからのLFAはどんな変化をしていくのか。
それでは、李のインタビューをお読みください!


■学習支援事業をするLFA

Q1. これまでのLFAの活動がどのように発展してきたのかを教えてください。

- LFAという事業・団体は、NPO法人Teach For Japan内で行われる学習支援事業として始まりました。初めから運営のノウハウがきちんとあったわけではなく、現場では様々な困難がありましたが、学生リーダーを中心に「子ども目線」で支援の現場を作り上げていきました。その中で、パス・チェンジ(=Path Change)や、「笑顔と結果」といった学習支援事業のビジョンが生まれました。子どもたちがLFAの学生教師と出会うことで、その先の人生の道筋が変わる。そのために、子どもたちが教室で見せる「笑顔」も、子どもたち自身の力となる「結果」も、どちらも大事にする。こうしたビジョンに向けて、子ども一人ひとりに対して最大限できることをし、学習支援の質に一切の妥協をしない。当時の活動は、今のLFAが大切にしている文化の根源となっています。


 こうした学習支援の変化とともに、多くの子どもたちが成長を遂げていくようになりました。高校進学率が向上し、学習支援受けた子どもが高校卒業後に大学生になるケースも生まれました。また、より多くの自治体・学校からお声がけをいただくようにもなりました。事業が大きく広がっていったことから、LFAは一事業ではなく、新たに独立することになりました。
 事業開始当初から、質にこだわって学習支援を行うという点に変わりはありません。そのため「指導の質」や実際に指導を行い子どもたちと関わる「教師の質」というものに徹底的にこだわります。特に教師については第14回のLFA通信でも取り上げられていますが、手厚い研修やサポートを通して質の高い支援を構築しています。そして、質にこだわることで「貧困の中にあるすべての子どもたちの学びと育ちを保障し、自立する力を育む」ことを目指してきました。

Q2.LFA自身も様々なことを学びながら発展してきたんですね。では、これまで学習支援事業を進めてきた中で、気付いたことはありますか?

- まず、「子どもは必ず成長する」ということに改めて気付きました。LFAがこれまで支援してきた子どもたちは様々な困難を抱えています。私たちが支援する子どもたちは主に貧困状態にある子どもたちですが、子どもたち自身が今抱えている課題、さらにその背景にある問題は深刻です。しかし、どんな困難な状況にある子どもでも、学習機会やその子に合った学習方法があれば成長します。また、すべての子どもたちが、今よりも「よく生きたい」と願っています。子どもの貧困やそこから派生する低学力や生活の問題を子どもたち個人の「自己責任」と突き放してしてしまうのではなく、環境を整えることで子どもたちに元々備わっている力は引き出すことができます。子どもたち自身が成長の可能性を持ち、適切な学習機会や方法を提供すればその成長を手助けできることがわかりました。


 さらに、支援を受ける子どもたちだけではなく、支援者(学生教師)側についても気付きがありました。それは、誰もが課題の当事者になれるということです。LFAの学習支援を担う学生教師には、様々なバックグラウンドをもった学生が参加します。その中には、自分自身が貧困状況を経験してきたなどの原体験をもとに参加する学生もいる一方で、そうした原体験を持たない学生もいます。しかし、原体験の有無にかかわらず、子ども一人ひとりに真剣に向き合い続ける経験を経て、学生たちは子どもたちや子どもたちが抱える困難に共感しその解決を担う当事者としての意識を持つようになります。実際に困難な状況にある人だけではなく、原体験を持たない人もその問題を知り解決にあたることを通して、誰もが社会課題の当事者になることができるのです。

Q3.学習支援事業から、子どもにも支援者にも可能性があることを見出したんですね。一方で課題や限界を感じることはありましたか?

- これまでの8年間を通じて、大きな変容を遂げた子どもも多くいますが、一方で変容を届けられなかった子どもたちもいます。変容を届けられなかった要因としては、LFAの支援に来た時には課題が深刻化していたり、学習の支援だけでは補いきれない生活面や発達面での課題を抱えていたり、ということがあります。学生教師やLFAの職員の中でも「もっと早く出会っていれば…」「学習以外の支援も包括的に提供できていれば…」といった声が上がっています。


 また、全国的な課題として、貧困世帯の子どもの人数に対する支援量が圧倒的に足りていないという点もあげられます。実際、全国の自治体のうち50%以下しかか学習支援を実施できていないというデータもあります(※)。また、第9回LFA通信でも取り上げましたが、実際に学習支援事業を運営する上でも様々な困難があります。


 このように、8年間を通じて可能性と同時に課題も見えてきました。最初の質問で、LFAの活動には「貧困の中にあるすべての子どもたちの学びと育ちを保障し、自立する力を育む」という目的があるとお話ししましたが、そこから程遠い現状にありました。
※NPO法人さいたまユースサポートネットの調査結果より


(LFAの学習支援事業の一コマ。子どもたちのパス・チェンジを目指し、学生教師が一分一秒に思いを込めて指導にあたります)

■限界を乗り越える

Q4.子どもたちに対する早期からの支援、充実した支援が必要だと感じるようになったのですね。LFAでは2016年度より「子どもの家」という新たな事業を始めていますが、LFAがそれまで学習支援を通して気付いたことがどのように反映されていますか?

- 子どもの家事業は、日本財団が全国100カ所に設置を目指す「子どもの貧困対策プロジェクト」のモデルとなる第1号拠点として始まりました。学童保育のような仕組みで主に小学校1~3年の児童を対象としています。学習以外にも読み聞かせや遊び、食事の提供などを行っており、安心安全な空間で包括的な支援を行っています。


 さきほどの質問でも、活動を通して支援が必要な子どもたちを早期に発見し、適切な支援を届けたいというお話しをしました。例えば、LFAの学習支援にも中学3年生で分数の計算ができない子どもたちがいます。しかし、子どもたちは”分数の計算ができない”というところだけに問題を抱えているのではなく、普段の生活から、さらにさかのぼって小学1年生頃の生活環境から困難を抱えていて、それが積み重なって今に繋がっています。子どもたちが今抱えている問題の背景には、学習以前の生活習慣や発達といったことがあり、それらが成長の中で積み重なっています。こうした問題を未然に防ぐためにも、早期から包括的に支援を届ける子どもの家事業を行いたいと考えました。

Q5.子どもの家事業をする中で、何か新たな気付きはありましたか?

- 子どもの家事業を通して、新たに二つのことに気付きました。
 一つは、行政・学校との連携により困難な子どもたちを早期に発見できるということです。例えば子どもの家の一号拠点である戸田市では、行政・学校との緊密な連携により、課題のある子どもを早期に見つけ出し、子どもの家につなぐことができています。子どもや家庭の状況をよく知る行政や、子どもが長い時間を過ごす学校と連携することで、子どもたちの課題を多面的に知り、働きかけることができるのです。


 さらに、行政・学校と連携することで、より丁寧な個別支援ができることもわかりました。先ほど挙げた戸田市では、行政・学校とケース会議などを通じて連携しています。そこでは個別支援計画を作成し、子ども・保護者を支える環境づくりをしています。それぞれの情報や専門性を合わせることで、適切な支援計画を立てることができます。行政・学校との連携は課題の早期発見だけではなく、支援の質を向上させる効果もあることがわかりました。

(子どもの家事業の様子。子どもたちの安心・安全に配慮した空間で、成長の後押しをします。)

Q6.行政・学校との連携事業ということでそのような気付きがあったのですね。子どもの家事業を始めたことで、新たに得られた気付きはその他にもありますか?

- まず、学習の支援以前に生活習慣や発達、人間関係など、子どもたちの成長過程で様々な問題が起きていて、それらに対する支援が必要だということがわかりました。例えば、どうしても集中して机に向かえない子がいる。よくよく話を聞いてみると、普段から落ち着ける場所がどこにもなくて集中する習慣が身についていなかったりする。あるいは、周囲の大人から後ろ向きな言葉ばかりかけられていて、どうせ勉強しても無駄だと、自分への期待も持てないでいる。こうした積み重ねが学力・学習の困難という一つの形に現れてきます。このことは学習支援を行っていても感じていたことでしたが、子どもの家事業を行い実際に低年齢の子どもたちと接する中で改めて突きつけられた課題です。その他にも、支援の専門家が足りていないという人材不足の問題や、必要な支援が必要な時に届かないといったシステムの問題も改めて感じました。


 一方で、先ほどの質問でもお話ししたように支援のやり方によっては解決の可能性があることもわかりました。ただし、「連携」することは簡単なことではありません。実際、戸田市では連携がうまくいきましたが、他の自治体では連携が上手くいっていないところもあります。戸田市でも簡単に連携できたわけではなく、様々な要素がかみ合って上手くいっています。


 いずれにせよ、子どもの家事業を行う中で、子どもたちの課題を早期に発見することの重要性や、実際に支援をする上で切れ目のない包括的な支援が必要であるという思いが強まりました。実際に行う上ではやはり困難がありますが、それを乗り越えてやる価値のあることだと思います。

■「社会変革」への挑戦

Q7.新たに行った子どもの家事業からも、さらにやるべきことが見えてきたんですね。これまでの事業の積み重ねを経て、今後LFAはどのように進んでいきますか?

- まず、現場においては、これまでの学びを活かして、学習にとどまらない包括的な支援を届けていきたいと考えています。これまでのLFAでは学習支援事業や子どもの家事業を通して子どもたちに学習等の機会を提供してきました。また、学習支援ではボランティアの大学生を育成することで、社会課題を解決する人材を育成しています。これまで、LFAは課題の最前線である現場での実践を通して多くのことを学び、また現場において結果を出すことを大事にしてきました。これまで活動の幅を広げてきたことで、教育、福祉、心理や発達、健康など、様々な角度から問題を見られるようになりました。現場を大事にし、現場から学ぶ姿勢は今後も変わりません。


 加えて、支援システムのモデル作りにも取り組みます。学習支援と子どもの家事業を行って、地域に様々な支援サービスが存在していても、それらがうまく繋がりあっていないために子どもたちの課題解決が妨げられていることがわかりました。LFAでは現在、団体のミッションとして「すべての子どもたちが自分の可能性を信じ、自分の力で人生を切り開くことのできる社会の実現」ということを掲げています。これまでは現場での活動に注力してきましたが、今後は、社会全体のシステムを編みなおす、「社会変革」をより目指していきたいです。

■社会のシステムを編みなおす

Q8.現在LFAでは、まさにこの「社会のシステム」ということに関連して支援システムのモデル構築を展望していますね。具体的には「子ども支援の生態系モデル」(=Children EcoSystem、以下CESモデルと呼びます)というものが現在構想されていますが、このモデルが必要だと考えるにいたった経緯を教えてください。

- 先ほどの質問でお話しした、「すべての子どもたちが自分の可能性を信じ、自分の力で人生を切り開くことのできる社会の実現」に新たな支援システムの構築が必要だと考えたからです。


 これまでの支援システムは一言で言うと「分断的」でした。個々の支援機関が独立して存在し支援を展開することで、課題の早期発見が難しくなり、子どもたちは適切な支援につながりにくくなっていました。これでは子どもたちの成長につながらない、分断的なシステムでは子どもの貧困は連鎖しつづけると考えました。


 真に子どもの貧困や教育格差といった課題を解決し、ビジョンを実現するためには、支援システムを変える必要があります。それは、課題のある子どもを早期に見つけ、必要かつ適切な支援につなげられるシステムであり、子どもたちが成長し、自立する力を得られるシステムです。前回お話した子どもの家事業では行政・学校との連携により早期発見が可能になり、支援の質も向上することがわかりました。このように、これまでの事業の積み重ねから、個々の組織が独立して存在する「分断的」なシステムではなく、「包括的」な支援システムが必要と考え、CESモデルの構想につながりました。

(これまでの「分断的」なシステムと、これから必要とされる「包括的」なシステムの比較)

Q9.CESモデルの特徴を教えてください。

- CESモデルは、困難な子どもをすべて包摂する支援システムのモデルです。困難を抱える子どもたちを早期に発見し、学習支援にとどまらない生活支援、発達支援など幅広い支援を切れ目なく行います。


 CESモデルでは①見つける②繋げる③支援するという3つのステップがあります。①「見つける」では、子どもの情報をデータベース化し、リスクのある子どもを早期に発見します。②「繋げる」では、まず子どもたちを必要な支援現場に繋げます。また、繋がるのは子どもたちだけではありません。関係者同士も支援会議などを通して繋がり、より適切な支援計画を策定します。子どもと支援、支援の関係者同士が繋がることでよりよい支援を子どもたちに届けます。③「支援する」では、年齢や発達状況に応じた支援を実施します。6歳から15歳まで切れ目のない支援を提供し、子どもの学びと育ちを保障します。


 これら3つのステップではそれぞれの場面で高い専門性が求められます。そのため、一つの組織だけではなく、自治体や学校、ソーシャルワーカー、支援団体など様々な組織の参加が不可欠となります。また、3つのステップは①から③までの一方向の流れにとどまるわけではありません。①から③までの要素が互いに影響しあい、CESモデルの中で関係者同士が学び合うことで事業も成長し、より良い支援が作り上げられていくのではないかと考えています。

(CESモデルの図解)

■CESモデルの実現に向けて

Q10.様々な組織が参加するCESの中で、LFAはどのような役割を担うのですか?

- 先ほどの質問にもありましたが、CESには様々な組織が関わります。そのため、まずは関係組織同士をつなげる役割を担うことが重要になると考えています。学習支援や子どもの家事業で多くの自治体や学校との連携をする中で培った経験を活かし、子どもの成長を支えられる連携を実現したいです。


 同時に、現場を担うことにもなると考えています。LFAのこれまでの活動は現場を大事にしてきました。そして、これからも現場から多くのことを学んでいきたいと考えています。そうした団体としての経験や考え方を活かして、CESの③支援するの質を上げていきたいです。

Q11.CESに関して、現在は具体的にどのような活動を行っていますか?

- 現在、3年後にCESモデルを完成させることを目指して動いています。そのために、2018年は現在の支援システムの問題や、必要な支援の形を詳細に研究する調査研究を行っていきます。まずは最適な支援システムのモデルを探ることになります。


 同時にCESモデルの導入も計画しています。現在1自治体から協力を得られる予定となっており、そこでCESモデルを実行することで子どもたちに支援を届けながら実際に必要な支援を見定めていきたいと考えています。

■子どもの貧困・教育格差の根本的解決に向けて

Q12.先ほどの質問で3年後を一つの目標地点としていますが、そこに向けた意気込みを教えてください。

- 今まで、そして今後の活動で得る知見やネットワークを十分に活用して子どもの貧困・教育格差という問題を根本から解決していきます。


 まず、今後はCESモデルを通して多くの知見を得ていくことになります。また、LFAとして支援システムに関する新たなモデルを提唱することになるため、その仮説検証ができます。現場運営・CESモデルの構築を通して、日本に必要な支援システムのモデルを体現していきます。


 ネットワークとは端的に言うとLFAのボランティアを経験した大学生のことです。現在LFAのボランティア活動を経験し卒業していった大学生は2000人以上います。LFAの学習支援プログラムを通して彼ら・彼女らは社会課題解決の最前線に立ちます。そうした経験を持った、卒業生と一緒に動くことができれば、課題解決に向けて大きな動きを起こせるのではないでしょうか。


 LFAにはこれまで得た財産、そして今後も得ていくであろう財産がたくさんあります。今後行うCESではこれらを最大限に生かして、社会のシステム作りという新たなステージに挑むことになります。今後とも、子どもの貧困・教育格差という社会課題の根本的解決に向けてスピード感を持って動いていきます。

いかがでしたでしょうか。
LFAではこれまでの活動を通して、学習支援、子どもの家と活動の幅を広げ、また活動を見直してきました。


2018年以降のLFAは、これまで同様課題の最前線での実践活動を重んじるとともに、社会システムに改めて向き合うという新たなステージに移ります。


その具体的な形がCESモデルです。


このモデルの実現を通して、LFAでは今後一層子どもの貧困・教育格差というLFAが向き合う課題の解決に邁進していきます。

今後ともLFAの活動にご注目ください!


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