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【発達障害を考える】〜発達障害へのまなざしを考える〜

2019.9.30

【発達障害を考える】〜発達障害へのまなざしを考える〜

みなさん、こんにちは。Learning for All 職員の福田です。

最近、「発達障害」という言葉をよく耳にします。「大人の発達障害」という見出しが雑誌に掲載されていたり、「発達障害  診断」で検索するとでてくるページが多いことからも注目を集めている事がわかります。

今回はその発達障害に関連して、発達障害を抱える子どもがどんな困難を抱えるのか考えていきたいと思います。
まずは、「発達障害という言葉が何を意味するのか」を見ていきましょう。

発達障害とは

発達障害は比較的近年に登場した言葉で、米国精神医学会の診断文類マニュアルDSM-Ⅲ-Rに初めて「発達障害(developmental disorder)」という言葉が登場したのは1987年のことです。しかし、1994年の改訂ではこの用語は消えてしまいます。

それにも関わらず日本ではそのまま根付き、医学に親しくない人でも知る言葉となりました。
ただ、発達障害には明確な定義がなされておらず、診断名も一定ではありません。実は非常に曖昧な言葉です。
(平成17年施行の発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障 害その他これに類する脳機能障害であり、その症状が通常低年齢で発現するもの」と定義されていますが、「そのほかこれに類する」の部分が医学的にどこまでであるか確定するのが難しいようです。)

しかし、「発達障害」という言葉はいくつかの障害の「総称」であること、そして、どのような障害が発達障害に含まれるのかは概ね共通の理解があるようです。

発達障害に含まれるもののうち、主要なものは「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と「注意欠如多動性障害(ADHD)」の2つで、他にも「学習障害(LD)」なども含まれます。
(これらがどのような関係にあるのかもまた非常に複雑ですが、ここでは詳細を省きます。)

(出所) 田淵俊彦「発達障害と少年犯罪」より引用

今回のブログでは、いったん「自閉症スペクトラム障害」、「注意欠陥多動性障害」、「学習障害」の3つを発達障害と呼ぶことにします。

それぞれ特徴を簡単に説明していきます。

「自閉症スペクトラム症候」とは、以前まで「アスペルガー症候群」という呼称でも知られていましたが、これは2013年改訂のDSM-5で「広汎性発達障害」「自閉症」とともに廃止された呼称です。(現在ではこれらは「自閉症スペクトラム障害」の呼称で統一されています。)
その主な2つの特徴は、「社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的な障害」と「限定された反復的な行動や興味、活動が見られる」ことです。(他人への興味が薄かったり、特定のことに強いこだわりを見せたりするなど)

「ADHD」は「多動」という言葉が表すように、不注意や多動といった特徴があります。例えば、じっと座っていられずにもぞもぞしてしまったり、我慢できずに離席してしまったり、指示を守れない、宿題の忘れ物が多いなどです。
「学習障害」は、「知能の低下が見られないにも関わらず、読む、聞く、書く、話すことになんらかの障害があること」を言います。例えば、字を読むことに障害を抱えている場合(読字障害(ディスレクシア))、「う」と「ら」のように似ている字を読み間違えたり、ゆっくりためらいがちに音読するといった症状が見られます。
「聞く」、「書く」などに困難を抱える子たちにもそれぞれの特徴が表れます。

こうした学習障害は決してまれな症状ではなく、「学童期の児童の5%」が該当すると言われています。


このように、同じ「発達障害」と呼ばれる障害でも様々な症状を見せる事がわかります。
特に「自閉症スペクトラム障害」はその「スペクトラム(連続体)」という名前にも現れている通り、明確な境界線がある障害ではありません。

この3つに限定してもなお、定義も境界も曖昧で、様々な症状を見せる障害群を「発達障害」と一括りにしてしまっていることがわかります。

錯綜するイメージ〜「犯罪」スティグマと「天才」像〜

さて、「発達障害」にはどのようなイメージがつきまとっているのでしょうか。

1つは「犯罪」との結びつきです。
2000年代冒頭、ある殺人事件を犯した少年は「人を殺してみたかった」といった供述をしており、精神鑑定が行われた末に「アスペルガー症候群(当時)が原因の心神耗弱状態であった」とされて、責任能力が否定されました。

それ以外にも似たような事例があるたびに、一部のマスコミでは「アスペルガー症候群=犯罪者」「発達障害=犯罪志向」といった印象を持たれかねない報道もされました。

しかし、発達障害だけが原因でこうした殺人事件を起こすことはないと言われています。

こうした犯罪に結びつく暗いイメージの一方で、「天才」のイメージを持たれる方もいるかもしれません。
例えば、映画「レインマン」ではサヴァン症候群の特性を持つ天才的な男性の様子が描かれています。分厚い本でも一度読めば全て暗記し、4桁の掛け算でも瞬時に答えを計算します。その他テレビ番組や雑誌などのメディアなどを見て「発達障害=驚異的な天才」というイメージを持たれた方もいるかもしれません。

しかし、冒頭に述べたように「発達障害」という言葉は非常に曖昧な使われ方をしています。
驚異的な記憶力などを発揮するのは、発達障害の中でも「サヴァン症候群」と呼ばれるものです。それとは逆に学習に困難を抱える「学習障害」も同じ発達障害の1つであることは認識しておくべきことでしょう。

いずれにせよ、「発達障害=◯◯」という安易な発想は、多様なものを一括りに論じる点で非常に危険です。意識して控えなければなりません。

「発達障害」の子どもは生活・学習にどんな困難を抱えるか

では、「発達障害」を抱える子どもは日常でどのような困難を抱えるのでしょうか。

「場の空気が読めない」「約束やものを忘れてしまう」といった日常生活での困難もあります。

また、「学校」に話を絞っても同様の困りごとは見られます。
先ほど学習障害の例で出したように、「字が正確に読めない」「音読ができない」のような学習での困りごとの例ももちろんあります。
その上、例えば学校では周りの友人になじめず阻害されてしまうケースも多々あるようです。

(出所)  岩波明「発達障害」より引用


また、ASD(自閉症スペクトラム症候群)に類する子は特に、「カリキュラムが学力に合わない」「いじめなど迫害体験」「嫌なことはやらないという拒絶反応」といった原因で不登校になる子が多いそうです。

ー「ウチの子が発達障害かも?」という時にはどうすれば良いか。

では、「自分の家の子が発達障害かもしれない」もしくは「自分が関わっている子どもが発達障害かもしれない」という時にはどうすれば良いでしょうか。

信頼できる著者の書物で症状を確認したり、ネットで検索するのでも良いですが、地域にある「子ども発達センター」のような、発達に課題のある子どもとその保護者の支援を行う機関への相談・受診が望ましいです。
(こうした機関の利用方法についてはこちらのサイトが詳しいのでご参照ください。)

特にご家族であれば、診断を得ておきたいという気持ちになられるかもしれません。
ただ、大切なのは診断をすることだけではありません。

精神科医の滝川一廣氏は「子どものための精神医学」のなかで、「必要なのは診断名ではなく、全体的な判断や「フォーミュレーション」だ」と述べています。
「診断」はあくまで分類に過ぎません。フォーミュレーションとは、その子は認識の発達が何才くらいか、関係の発達が何才くらいかと丁寧に見当をつけた上で、子ども自身がどう思い感じているのかも鑑みて対応を考えることです。

グラデーションがある症状であるのであればそうした考え方が求められるのも納得がいきます。

ー最後に

さて、今回は発達障害をテーマに、どのようなイメージが持たれているか、どのような困難を抱えるかを考えました。
「障害」という名前からか、発達障害はまれにしか起こらない症状で、重篤なものであるというイメージが付きまといます。

しかし途中で見た数字のように、意外と身近でそして軽度なものから重篤なものまで様々な症状がある障害群であることがわかりました。

自分自身もしくは身近な人がそうした障害を抱えているかもしれないと不安に思われる方は、詳しく調べてみたり専門家に話を聞いたりしてみてはいかがでしょうか。

また、そのようにして少しでも「発達障害」というものへの理解が正しいものになることを望みます。

参考文献
杉山登志郎「発達障害のいま」(講談社現代新書)
岩波明「発達障害」(文春新書)
田淵俊彦「発達障害と少年犯罪」(新潮新書)
東京都福祉保健課「発達障害を理解しよう」
AERA「医師から見た発達障害のリアル」
滝川一廣「子どものための精神医学」(医学書院)
上島国利「やさしくわかる精神医学」(ナツメ社)
黒田美保「これからの発達障害のアセスメント」(金子書房)
内山登紀夫「LDのおともだち」(ミネルヴァ書房)
LITALICOジュニア「発達障害とは」


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