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【南青山の児童相談所建設について考える】社会的養護とは?  

2018.10.26

こんにちは。Learning for All職員の藤原です。

今日は、昨今話題になっている南青山での児童相談所建設についてのニュースについて考えていきたいと思います。

ニュースの概要

東京・南青山の一等地に東京・港区が約72億円で取得した土地に、児童相談所などの施設が建設されることになりました。賛成の声もある一方、住民説明会は紛糾しています。

 今月12日に行われた住民説明会でのやり取り。港区の担当者を近隣の住民が問い詰めます。問題となっているのは、区が建設しようとしている児童相談所などの複合施設です。その建設場所は、都内でも有数の一等地である南青山5丁目。表参道の駅からすぐ近くです。この土地は元々は国有地で、港区が去年取得しました。区の資料によると、土地の取得のために補正予算として計上したのは72億4000万円となっています。港区の計画によると、地上4階建てで児童相談所の他に、4階には母子生活支援施設が入ります。この母子生活支援施設には、経済的に困っている母子家庭のほか、DVの被害者家庭も入居する計画となっています。港区によると、施設は来年8月に建設が開始され、2021年4月には開設予定となっています。

住民説明会では、「なぜこの一等地でどう考えると選択されるのか」「近隣の小学校に通えないような子どもたちという理解でいいんですよね」「青山の地域性を考えたらちょっとこの施設は難しいんじゃないか」など、土地柄と施設の内容についての批判が多くみられています。

ニュースの背景

実際、港区の平均世帯年収は1115万755円で、かなり高収入の方が多い地域だと言えます。しかし、生活保護を受けている港区民の子ども(平成27年度の0~17歳の子ども)は143人おり就学援助などの支援を受けている子どもたちもいます。そのような子どもたちの育つ環境を支援する必要があります。

また、港区で実施されている港こども食堂は、経済的に困窮している家庭だけでなく、「子育て中の方はどなたでも応援しています」というスタンスで子どもと親に対しての食事を提供しているなど、経済面だけでなく様々な面で支援を必要としている家庭に開かれています。

実際「港区子どもの未来応援施策基礎調査報告書」でのヒアリングでは以下のような声が挙げられていました(コメント部分原文を引用)。

港区においても生活が困窮している世帯があるということ、また経済状況に関わらず子育て中の孤立や家庭環境の問題を抱える家庭があり、相談できる場所などが必要とされていることがわかります。

なぜ子育て支援施設が設置されるのか

ここで挙げられている「児童相談所」や「母子生活支援施設」の設置は、社会的養護という概念に基づいて設置されています。

聞きなれない言葉、社会的養護。厚生労働省のHPによると、以下のように説明されています。

社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。
社会的養護は、「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」を理念として行われています

ここで挙げられている「子どもの最善の利益のために」「社会全体で子どもを育む」について考えることで、今回のニュースへの理解が深まると考えます。

子どもの権利〜子どもの最善の利益のために〜

「子どもの最善の利益のために」という言葉には、「子どもの権利」という概念が表現されていると考えます。

子どもの権利とは、子どもの持つ基本的人権のことで、1989年に「子どもの権利条約」が採択され、1990年に発効しました。日本は1994年に批准しており、具体的には、以下の4つに分けられます。

・生きる権利:予防できる病気などでいのちを奪われないこと。病気やけがの治療を受けられること、 など
・発達する権利:教育を受け、休んだり遊んだりできること。 考えることや信じることの自由が守られ、自分らしく育つことができること、など
・保護される権利:あらゆる種類の虐待や搾取から守られること、 など
・参加する権利:自由に意見を表明したり、集まってグループ をつくったり、自由な活動を行ったりできること、など

この4つの権利について考えてみると、先進国の日本であってもすべての子どもについて守られているとは言いがたい状況にあります。貧困家庭であっても、最低限の食事や病気の治療を受けることはできるでしょうか。またDVを受けている家庭の子どもは虐待から逃れ自分らしく育つことができているでしょうか。これまでLearning for Allが関わってきた子どもたちの中にはこういう子どもたちも何人もおり、答えはNOです。

子どもは生まれる場所を選ぶことができません。貧困家庭をはじめ、子どもの権利を守った適切な育ちの環境が整っていない子どもに対し、親や家庭を責めるのではなく社会で子どもの権利を守っていく必要があります。

「社会全体で子どもを育む」とは

社会的養護のもう一つの理念である、「社会全体で子どもを育む」ことは、これからの社会において必要とされてきています。

昔に比べ共働きの家庭が増えており、これからはどんな子どもについても家庭のみで子どもを育てるのではなく、家庭の周りにいる人々が関わっていきながら育てることがスタンダードになっていくでしょう。

子どもにとっても、様々な人と関わる中で、親に相談できないことを話し合える人ができたり、自分を認めてもらえる居場所ができたり、自分では気づかなかった新たな長所を見つけてくれる人に出会えるかもしれません。

そもそも、子どもはこれからの社会を担う人材であるということからも、子どもは社会全体で育てていくべきものです。

生きる・育つ中で困難を抱えている子どもがいるとき、その子どもや家庭に困難の責任を押しつけること、自己責任として手を振り払ってしまうことは、社会全体の責任放棄ともいえ、問題の本質的な解決にはなりません。

子どもの周りにある様々な人々が同じ方向を向き、手を携えて「社会全体で子どもを育てる」という考えを持つことが必要だと考えます。

まとめ

今回のブログでは、港区での児童相談所建設のニュースから、社会的養護について考えていきました。
どんな地域にも貧困家庭の子どもや支援が必要な子どもがおり、子どもの権利の観点から社会・地域全体で子どもの育ちを応援していく必要があるということが伝われば幸いです。

色々な困難を抱える子ども・大人に対して手を差し伸べていくことは、ひいては私たち一人ひとりがときにぶつかるような生きづらさを解決することにも繋がるのではないでしょうか。

 

参考資料

テレ朝news 南青山に「児童相談所」住民説明会で大紛糾
港区子どもの未来応援施策基礎調査報告書
港区 資料3 港区の子どもを取り巻く状況
年収ガイド 港区の平均所得・年収
yahooニュース あの港区にこども食堂!? 「セレブの住む街」のもう一つの顔
Learning for All 国際子どもの日に考える『子どもの権利』と『子どもの貧困』


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