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七夕の日に考える〜将来の夢と子供の貧困〜

2018.7.7

みなさんこんにちは。Learning for All 職員の藤原です。

今日7月7日は七夕です。今回のブログでは七夕にちなんで、子ども達の将来の夢と子どもの貧困の関係について考えていこうと思います。
子どもの頃、または小さいお子さんのいるご家庭では願い事を書いた短冊を飾ったという方も多いのではないでしょうか。
七夕のイラスト「短冊を飾る子供たち」

短冊には「サッカー選手になりたい」「歌手になりたい」など将来の夢が書かれることが多いですね。「大人になったらなりたいもの」のアンケート調査結果では、バラエティ豊かな将来の夢が並んでいます。


(第一生命保険株式会社 第 29 回「大人になったらなりたいもの」のアンケート調査結果 よりLearning for All作成 )

自己肯定感と将来の夢

将来の夢を持つことができるとはつまり、将来に希望を持っていると言うことができます。
実はこの「将来に希望を持てるかどうか」には自己肯定感が関わっていると言われています。内閣府の平成26年版 子ども・若者白書(概要版)によると、「将来に明るい希望を持てるかどうかは,<1>自分自身を肯定的に捉えられているか(内部要因),<2>自国の将来を肯定的に捉えられているか(外部要因)が関係」しています。また「自己肯定感が高い若者や自国の将来に明るいイメージを持っている若者は,同様に将来への希望を持っている割合が高い」とも言われています。
 
(内閣府の平成26年版 子ども・若者白書(概要版)よりLearning for All作成)

つまり子どもが将来の夢を持てるためには、その子自身が自分のことを肯定できているか、自分の国の未来を明るいと思っているかが関係しているのです。

自己肯定感と子どもの貧困

今回は、「その子自身が自分のことを肯定できているか」にフォーカスしていきます。
先ほど言及した自己肯定感と子どもの貧困には関連があるのです。2014年に大阪市内の公立小学校51校の小学5年生、公立中学校31校の中学2年生およびその保護者に対して行われた「大阪子ども調査」によると、子どもの自己肯定感に関する項目で、貧困層(※)と非貧困層に差が見られることがわかりました。

(「「大阪子ども調査」結果の概要」よりLearning for All作成)

上記のグラフを見ると、特に「自分は価値のある人間だと思う」という項目や「自分の将来が楽しみだ」という項目について、小学5年生でも中学2年生でも貧困層と非貧困層で大きな差がついています。このデータからは、子どもの貧困と自己肯定感に関連があるということがわかります。 

子どもの貧困と将来の夢

また、下のグラフは相対的貧困にある子どもとそうでない子どもの将来の夢の有無を比べたデータです。小学5年生と中学2年生の両方で、貧困層と非貧困層で将来の夢がある率に差が出ています。貧困層にある子どもほど将来の夢を持てていないということがわかります。

 

(「「大阪子ども調査」結果の概要」よりLearning for All作成)

将来の夢がないことが大きな問題だというわけではありませんが、貧困かどうかによって将来の夢を持っているかに差がついているということは注意すべきではないでしょうか。貧困の連鎖については様々なデータが示されていますが、このデータで示された貧困層と非貧困層で将来の夢を持っている割合に差があるということは、貧困の連鎖に深く関連していると考えます。

まとめ 

ここまで見てきたデータによると、貧困層にある子どもほど自己肯定感が低く、将来の夢を持ちにくいということがわかりました。

貧困世帯の子どもが自己肯定感を持てない背景としては様々なものが考えられます。貧困によりクラブ活動や習い事などに参加できず周りの人との人間関係が築きづらくなるため孤立してしまう(埋橋, 2015)、もともと家庭が勉強できる環境にないため学力を伸ばせず学校で認められる機会が少なくなってしまう(阿部, 2015)、経済的困窮により親が養育に余裕がなくなりそのストレスが子どもに影響を与える(山本, 神田 2017)など様々な要因が影響しています。  

子どもの貧困というと、格差の再生産や学習という側面が注目されがちですが、貧困によって制限されるものは学力だけではありません。自己に対して満足でき、自分で自分を認められるという自己肯定感を持てない傾向があったり、それによって将来の夢を持ちにくいのです。

すべての子どもが世帯の所得に関わらず、自己肯定感を持ち将来の夢を持てる社会にすべきではないでしょうか。そのために私たちは何ができるのか。七夕に際して皆さんも考えてみませんか。
七夕のイラスト「短冊をつるす男の子」

※世帯等価所得(世帯の合算所得を世帯人数で調整した値)が125万円以下の世帯 (125万円は厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」において推計された相対的貧困基準)

[参考文献]
第一生命保険株式会社(2018)「NEWS RELEASE まもなく成人式!子どもたちの夢に変化の兆し?第 29 回「大人になったらなりたいもの」調査結果を発表 男の子の憧れの的は「スポーツ男子」から「クレバー男子」へ 15 年ぶり「学者・博士」が一番人気に 」
内閣府(2014)「平成26年版 子ども・若者白書(概要版)」
阿部彩・埋橋孝文・矢野裕俊(2014)「「大阪子ども調査」結果の概要」
阿部彩(2015)「横浜市 市会 孤立を防ぐ地域づくり特別委員会平成27年9月30日 「子供の貧困問題と対策について」」
山田理恵・神田直子(2017)「家庭の経済格差によりリスクに対する防御促進要因の検討」
埋橋孝文(2015)「子どもの貧困をどう捉えるべきか」


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