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母の日に考える「母子家庭と貧困」

2019.5.12

 

みなさん、こんにちは。
Learning for All 職員の福田です。

今日は母の日ですね。みなさんの中にもお母様や奥様にプレゼントを贈られる方は多いのではないでしょうか。

さて、今回のブログでは、「母の日に考える『母子家庭と貧困』」と題して、特に母子家庭に注目して貧困との関係を考えてみたいと思います。
(前回のブログと合わせてお読みいただけると、より理解が深まると思います。)

母子家庭に関する統計データ

母子家庭の貧困に関して話を始める前に、まずは経済状況などに限定せずデータを概観してみましょう。

まず、日本における母子家庭の世帯数は平成28年度において123万世帯です。これは父子家庭の世帯数18.7万世帯に比べて非常に大きい数字と言えます。
また、「ひとり親家庭になった理由」は、離婚が8割です。離婚については父子家庭も同じくらいの割合ですが、母子家庭で特徴的なのは「未婚の母」の割合が約1割あるということです。なお「未婚の父」の割合はほとんどゼロに近いです。

(出所) 厚生労働省「平成28年度ひとり親世帯等調査結果」より作成

そのほか様々なデータがありますが、母子家庭と父子家庭を比べて大きく異なるのが就労状況・経済状況になります。
まずは、就労状況についてみていきましょう。

母子家庭の母親のうち就労しているのは81.8%ですが、その内訳は正社員が39.4%に対し、パート・アルバイトが47.4%です。一方で父子家庭の父親は85.4%就労しており、そのうち正社員が67.2%、アルバイト8.0%です。

(出所) 厚生労働省「平成28年度ひとり親世帯等調査結果」より作成

いかに多くの母子家庭の母親が不安定な雇用形態で働いているかがわかります。

また、母子家庭と父子家庭では、ひとり親世帯になったことを契機に転職する人の割合も違います。ひとり親世帯になったことを契機に転職する人の割合は、母子家庭で45.5%、父子家庭で24.7%です。
その転職の理由も、下のグラフにあるように母子家庭で「収入が良くない」ことが最大の理由になっています。

(出所) 厚生労働省「平成28年度ひとり親世帯等調査結果」より作成

このことからも、母子家庭の母親が経済的な理由で生活スタイルの変更を余儀なくされていることがわかります。

次に、実際の家計状況についてもデータをみていきましょう。
まず母子家庭の平均収入(就労収入)は243万、一方父子家庭では398万です。母子家庭と父子家庭では2倍ほどの差があり、両者とも世帯収入の平均額545万円と比べて非常に少ないこともわかります。
実際に、ひとり親家庭の54.6%が生活保護を受給しており、日本の全世帯の生活保護受給率1.69%と比べると非常に高い数字であると言えます。

日本における母子家庭への支援

日本では母子家庭に対してどのような支援が行われているのでしょうか。
母子家庭に限らず、ひとり親家庭に対する支援は、①子育て・生活支援、②就労支援、③養育費確保支援、④経済支援の4つに分けることができます。こうしたひとり親家庭への支援については厚生労働省「ひとり親家庭等の支援について」(ぺージ下部にリンクあり)に詳しく記載されています。

(出所) 厚生労働省「ひとり親家庭の支援について」より引用

ここでは特に、これまでの話と関連性のある前者2つについてどのような仕組みがあるのかごくごく簡単にみていきます。

まずは子育て・生活支援の制度についてみてみましょう。
例えば、生活や求職活動についての相談・指導などを行う母子自立支援施設は全国に設置され、28年度では70万件以上の相談を受けています。
また、母子生活支援施設と呼ばれる施設もあります。こちらは入所している母子の生活支援を行う施設です。前夫による暴力や住宅の事情によって安定した生活が営めない世帯が支援を受けることができます。
これら以外にも多くのサービスが用意されています。

では次に、就労支援について見ていきましょう。
例えば、ハローワークによる支援があります。キッズスペースが用意されたり、仕事と子育てが両立しやすい求人が確保されたりなど、母子支援に特化したハローワークもあります。
また、必要な資格の取得を促すために、その資格に関わる養成の受講期間の給付金が得られる高等職業訓練促進給付金という制度もあります。
就労支援についても、これら以外の支援も多く用意されています。
こうしてみてみると、母子家庭に対する支援制度は多岐にわたり充実していることが伺えます。しかし、こうした制度が必ずしも功を奏しているとは言えません
「ひとり親世帯など調査結果」にはこうした支援の利用率が掲載されています。
多くのサービスの利用率が5%を切っていることが、このグラフから見て取れます。
また、利用率の低さに加えて、そもそも「知らなかった」と答える人が非常に多いことがわかります。
こうした数字をみると、制度が認知されていないことが大きな課題であると言えます。

(出所) 厚生労働省「平成28年度ひとり親世帯等調査結果」より作成

また、認知が進んでいるものについても、認知以外の壁があります。
例えば、先日のブログでも離婚後に養育費を受け取ったことがない母子家庭が半数以上あることを指摘しましたが、養育費の場合「受け取ったことがない」理由は「請求できることを知らなかった」が0.1%に過ぎないのに対し、「相手と関わりたくない」と言う理由が31.4%で最大でした。
このように、周囲の人からの目線を気にしたり、関係性が良好でないことなどから、支援の窓口や情報にアクセスできないと言う声もあるようです。
また、地域によって支援メニューにばらつきがあったり、就業支援については非正規雇用が中心になったりと、アクセス以外にも様々な課題があります。
いずれにせよ、十分な支援が届かない方が多くいる現状は解決されなければなりません。

終わりに

前回のブログで見たように、日本社会の価値観が女性を経済的に弱い立場に追い込んでいることが確認できます。
また今回は、母子家庭が特に経済的に弱い立場に追いやられることが多く、支援のための制度も十分に周知されていないために貧困率が非常に高いことが確認できました。

私たちLearning for All は、地域の子どもを包括的に支援する取り組みを行いますが、それは子どもを直接支援することにとどまるものではありません。
支援の網目から漏れる家庭全体に対して適切な支援を届けるだけでなく、地域の中で自然と視界から消えていく家庭が地域のつながりの中に包摂される一歩となることを私たちは目指しています。

しかし、その課題の根本には日本社会が前提としてきた考え方があることを忘れてはなりません。

「男性が外で稼ぎ、女性は子供を産むべきだ」という性別分業の考え方とそれを前提とした制度が、女性を男性の経済的庇護の下に追いやり、その庇護から外れた女性を貧困に追いやる大きな要因であることを、私たちは自覚しなければなりません。

参考文献
ー阿部彩「子どもの貧困」岩波新書
ー小林美希「ルポ 母子家庭」ちくま新書
厚生労働省「平成28年度ひとり親世帯等調査結果」
厚生労働省「ひとり親家庭等の支援について」

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