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【LFA卒業生インタビュー】社会人になった私が考える、LFAがもたらす子どもと大人の変容

2018.8.2

こんにちは!Learning for All 経営管理チームインターンの下谷です。
今回は、2015年6月に掲載して好評をいただいたLFA卒業生の染野あゆみさんのブログ記事を再掲いたします。


九九ができるようになった喜びをいつまで覚えていましたか。

こんにちは!久々のblogにどぎまぎしています、この春に社会人になりました、染野あゆみです。学生時代に2年ほどLFAで活動し、現在は人材会社で働いています。今回は私の経験談を踏まえつつ、LFAのブログを読んでいらっしゃる方がおそらく感じているであろう疑問にお答えしたいと思います。

「社会課題だとか、リーダーシップだとか、なんだか、おっきいことを語っているけれど、LFAの活動って本当に意味があるの?」

こんな疑問をお持ちの方はいませんでしょうか?LFAに関わる前の私は少なからずそんな疑問を持っていたものの、説明会でLFAのスタッフとお話しする中で疑問が解消されプログラム参加を決めました。
私は、LFAのプログラムは子どもとその子どもにかかわる大人のどちらの人生も変える意味を持った場だと思います。上のような疑問をお持ちの方もお持ちでない方も是非ご一読ください。

自分の可能性を見失った子どもとの出会い

「九九は得意だから・・・。」
2013年5月。私が担当した中学2年生のもえちゃん(仮名)が言っていたことです。
得意だと言えるものがある、それ自体はとても素敵なこと。でも、彼女は中学2年生。この言葉は私には大きなショックでした。九九は小学2年生で学習する内容です。その後、「大きな数の掛け算・割り算」「小数」「分数」などが続き、中学校に上がってからは「正負の数」「一次方程式」「比例と反比例」等を学習します。中学2年生のその時期は「文字式の計算」を学んでいる頃。でも彼女は、九九より先の全てができませんでした。成功体験が、6年前から止まっていました。

数学だけではありません。中学生になってから1年間勉強をしているはずの英語は、文章の読み書きはおろか、自分の名前をローマ字で表すことすらできません。アルファベットの読み書きもままならない状態でした。
その子は「無理」が口癖でした。「○○は無理、やんない」と言い始めたら最後、勉強は手につかなくなります。「高校には行かない。だから、勉強は必要ない。」何度も何度も頑なにこう言われて、悩みました。

ここまで読んで下さった方の中には、「勉強サボって遊んでいたんだろう」「努力が足りないんじゃない?」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、彼女はすごく真面目で努力家な子でした。学校の板書用のノートがとってもきれい。プリントもきちんとファイリングしているし、提出物の管理もばっちり。
兄弟が多く、家ではいつも下の子たちの面倒を見ていました。両親がそろって家を空けてしまうことも多いのですが、家事も厭わず当たり前のように行う子でした。寺子屋に来る前(土曜日の午前中)には、洗濯や食事の片づけ、兄弟たちを遊びにつれていくといったことが日課でした。家族や友達の良いところを探すのが上手で、特に小さい子たちの話をするときには、とっても優しい笑顔を見せてくれる、実際の彼女はそんな子でした。

少し、想像してみてください。

“真面目に取り組んでいたけれど、授業が分からなくなってしまった。1つ分からないことができたら、次の単元も分からなくなってしまった。家で教えてもらいたかったけれど、お父さんもお母さん仕事で忙しそう。弟たちの面倒も見なくちゃ。お姉ちゃんはもう結婚していて、家にいないし。ああ、気がついたら、分からないことがまた増えていた。「できないのは、頑張らないからだ」と言われている。お母さんには「お姉ちゃんはできていたのに」と、がっかりした顔をされてしまった。確かにお姉ちゃんは勉強ができたなあ。学校の先生には「今の成績ではどこの高校にも行けないですね」と言われてしまった。
あれ・・・?真面目に頑張っていたはずなのに。・・・そうか、私ってもしかしたら、できない子なのかもしれないな。

彼女はそんな風に考えていたのかもしれません。
一生懸命に授業を聞いて分かろうとし、家に帰っては家事を行い下の子たちの面倒を見て、と、頑張っていたはずなのに、学校に行けば毎日「できない」を突きつけられる時間を過ごすもえちゃんの気持ちを、考えてみてください。
それでもあなたはこの子に向かって“もっと努力しろ”と言えますか。

7人に1人という数字が表すもの

少し話がそれますが、私はもえちゃんと出会って改めて考えたことがあります。
私は中学校での経験から、家庭環境が人に与える影響を考えるようになりました。家庭で苦しんだ子どもが、学校内で友人たちと上手く付き合えずにいることがある。それがいじめにつながることもあるのだと、ぼんやりと考えていました。

“でも、だったら誰が、その問題を解決できるのだろう。社会では家庭は閉ざされていて、家のことを外に相談するのは恥ずかしいことだとすら言われている。学校の先生だって、家庭に踏み込むことはできないし、そもそも十年以上もの時を経て築かれた性格って、変わらないと思う。納得はできないけれど、きっと世の中からいじめはなくならない。本質的には、誰も解決できない。”

私はこう考えていました。

私が中学校で出会ったその子は困難を抱えていました。当時の私は「いくら家庭環境に問題があるって言ったって、あの子が悪い」「やればできる勉強をなんでやらないんだろ」そんな風に思っては、あの子を傷つけていたのだろうと思います。

日本では155万人の子どもたちが教育格差下にあると言われています。その数、7人に1人。私たちが知らないだけで、すぐ近くに困っている人がいるんです。隣の人が苦しんでいるとも気がつけず、無意識に傷をえぐっているとしたら、それはとても怖いことだと思います。もえちゃんと向き合うことは、同時に、私の葛藤と向き合うことでもありました。
育った環境が原因で自分の可能性を閉ざしてしまっている彼女も変わることができるのだと、信じて向き合うことにしました。

貧困状態にある子どもと向き合うということ


一口に向き合うと言いましたが、簡単なことではありません。LFAでは、土曜日の3時間の授業のために練りに練って授業をデザインします。50時間に渡る濃密な研修の資料を読み込み、子どもたちの反応を徹底的に想定し、対応を考え、一人ひとりの理解に合わせた教材を作成し、ロールプレイングを繰り返し、“子どもたちに、こんな風に輝いてほしい”という願いを込めて指導に臨みます。

一度傷を抱えてしまった子、考え方が偏ってしまっている子と向き合い切るには多大なる忍耐力が必要です。「できない」と手をつけようともしない勉強にいかに着手させるかだけでも、試行錯誤を繰り返しました。

また、毎週土曜日の3時間のみという限られた時間の中で変化をもたらすには、言葉一つ、行動一つ、文字の如く一分一秒が大切になってきます。たとえば、「よくできたね!」ではなくて、「よく頑張ったね!」と褒める。前者は「できる/できない」という結果が大事であると子どもに認識させますが、後者は「頑張った」というプロセスが重要なのだというメッセージとなります。「もっとこうしてほしい」という気持ちを伝えるときにも「あなたはここが素敵だね。“でも”もっとこうするといいね!」と逆説で繋ぐのではなくて、「あなたはここが素敵だね。“だからこそ”もっとこうするといいね!」と伝えます。前者は自分の良いところを否定されてしまったような気持ちになってしまいますが、後者は嬉しい気持ちになりますよね。そういったことも考えながら一瞬一瞬に意味を持たせられるよう指導を行ってきました。

小さくも、大きな変化


そんな指導の中で、もえちゃんも抱えていた学習遅滞を少しずつ解消していきました。最初は、一桁×二桁の掛け算から。だんだんと、二桁×二桁の掛け算ができるようになり、割り算ができるようになり、分数の意味を理解して、と、「できる」が増えて、「無理」が減っていきました一つ、また一つと、小さな小さな成功体験が積み重なっていきました。

自分と向き合ってくれる大人がいて、認めてくれる。期待してくれる。褒めてくれる。叱ってくれる。ちょっとずつだけれど、できることが、増えていく。

そんな経験を重ねた彼女は、一年半後の中学三年生の秋にはもう別人でした。「高校に行って簿記の資格を取る」という明確な目標を持ちひたむきに勉強する背中。分からない問題にぶつかったときには本気で悔しがる様子、何より、表情がとっても穏やかになり、笑顔が増えました。
「頑張ったね‼」と伝えたら「でしょ??」って笑って返してくれる。もう、可愛くてたまんないですよ。

「簿記のテストで100点を取りました!」第一志望の高校に進んだ彼女が誇らしげに語る姿は二年前に九九が得意と話していた彼女とは別人のようでした。

誰だって、変わることができる。輝くことができる。

今ならこう、言い切ることができます。その輝きを潰すのも引き出すのも大人次第なのだと、強く思います。

困難を抱えたまま、気づかれずにいる子どもの存在


寺子屋を卒業した子どもたちが遊びに来て、目を輝かせながら高校生活を語ってくれることは、私たちにとってとても幸せな瞬間です。
一方で、彼らの話を聞きながら教育格差の問題の深刻さに改めて気が付きます。私が知っている子どもたちが進んだ高校はすべて、偏差値50を割る高校です。偏差値を評価軸に置くことは好きではないけれど、そこに学習面・経済面・心理面など多角的に困難を抱えた子どもが集まりやすいこともまた事実。

寺子屋の卒業生の一人が「毎年10人くらい(高校を)辞めて行くんですよ。」と言っていました。たまたま自分と向き合ってくれる大人と出会ったことで前を向き始めた寺子屋の子どもたちのすぐ近くに、困難を抱えたまま気づかれずにいる子どもたちがいる。きっと、寺子屋の子どもたちのように、自分と向き合ってくれる大人に出会っていれば、彼らの人生は少しは変わったのではないでしょうか。でも、今はこの問題を真剣に考え、子どもたちと向き合っている人が圧倒的に少ない。限られた人数の子どもたちとしか向き合いきれない。だから、一人でも多くの人に少しでも早く教育格差の問題に目を向けて欲しいし、子どもたちと出会ってほしいと思います。


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